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アトラスFA50のアクション修理のまとめ
いきさつ
ご紹介でお伺いさせて頂いたかなり由緒正しい名家にあったピアノで、虫が全く入ってなく、ただ、やはり調律もお休みされていたこともあって、湿気で動きがかなり悪くて、ご説明させて頂いて、そのままアクションをお引き取りさせて頂くこととなりました。
ピアノは、アトラスFA70で、音楽の先生をされていたおば様が、大手メーカーのものも並ぶなか、あえて選んだピアノだそう。
低音がアグラフだったり、ハンマーもドイツ製のレンナー社のもので、バックチェックがグランド仕様だったり、当時のアトラスのこだわりの感じられるきれいなピアノで、おば様が選ばれたのも納得です。
帰省の折に、娘さんや、お孫さん方が弾くので、気がかりであったようで、ご夫婦で説明に耳を傾けてくださり、ご夫婦の気持ちよいご決断と、第三メーカーのこだわりのピアノを修理させていただけることが、とてもうれしいです。
なんだか居心地がよすぎて、話せば話すほどいろいろなところでつながっている部分がたくさんあって、そのようなところでも、修理させて頂ける縁を感じて、娘さん方のご帰省される年末までに、きっちり修理させていただきますので、お待ちくださいね!
修理前
西条市・アトラスFA70のアクションの解体を行いました。
虫食いもなく、いろいろ、贅沢なアクションです。

ハンマーが、ドイツのレンナー社製のものだったり、

バックチェックが、グランドのもの、そのまま使われていたり、当時、アトラスの意気込みが感じられる気がします。
このように、仕様の変わっているアップライトピアノ(ヤマハのYUAのクイックリターン(板バネでハンマーを押し戻して、連打性を上げる。)や、アポロのSSS(アップライトピアノなのに、ソフトペダルを踏むと、グランド同様、鍵盤がスライドして、打鍵する位置が変わる。)など、)をみると、ほとんど完成されたようにみえるピアノを、さらにグランドに近づけるよう、良くしていこうという制作側の想いが感じられて、なんだか胸が熱くなります。
点検にお伺いした時、ものすごく動きが悪くて、でも、ガタつくというか、ブレる感覚もあって、なんでかな、とおもったら、

センターピンがぬけてきていて、え、ガタ+スティックってことですかね?

みてみると、やっぱりセンターピンが飛び出してきていて、それでハンマーがブレて打ってて、でも、このようにスティックもしていて、私はあまり出会うことがなかったケースで、いつも以上に慎重に作業を進めていかないといけない予感です。そして、このようになっているまま弾き続けると、どんどん、他も負担がかかって、あれよあれよと悪くなっていくので、このタイミングで作業させて頂けて、ほんとによかった、と、心から思いました。

ジャックスプリング全交換
西条市・アトラスFA50のアクション修理に入ります。
ジャックスプリングの交換と、ジャックとウイッペンのセンターピンも、見ていきます。

元のスプリングと接着剤を、きれいに取り除きます。
先日納品されたアトラスの時と接着剤も違って、今回の方が作業しやすかったです。どのメーカーも、年式によって使われていた接着剤が違っていたりして、そういうのを感じながら修理をしていくのも、楽しかったりします。

新しいスプリングを取り付けました。いつもと同じように、ワイヤーやスプーンも磨いています。

ダンパーロットも磨いて、ピカピカです。
ハンマーのセンターピンの状態が頗る悪いので、ジャックやウイッペンも、かなり慎重に見ていったのですが、抜けてきているのものは一本もなく、むしろ理想的で、一台のピアノの中にも、いろんなことが起こるものなのだな、と改めて思いました。
ダンパーレバークロス貼替

丁寧な黒鉛処理のおかげでそこまでの消耗はないのですが、それでもスプーンによってできたくぼみにひっかりがあるので、新しくします。

古いクロスを取り除きます。こっちの接着はちょっと硬い感じでした。けっこう木部もデリケートで、ささくれをつくらないように、慎重に作業しました。

クロスを裁断して、貼り付けました。ぴしっときれいです。

ダンパーレバーを取り付けて、細かく位置を修正しました。
このアクション、ダンパーブロックの取り付け位置がちょっばらつき気味だけど、左右の間隔やなどは、元々すごくきれいだったものですから、逆にブロックのばらつきをそれ以上に合わせつつ、全てをあわせるのが難しくて、でも、最初よりつめて合わせられたと思います。本体にばっちりあっているといいのだけれど。。
レール類には、バックチェックスキンが積もっていたので、きれいにして、

組み立てました。
ホコリなどは、さらっとしている感じで、さらにきれいになったとおもいます!
三メーカーで、木製アクション、ちょっと慎重に進めなくてはなりませんが、先生ご夫婦の気持ちよい決断に、精一杯応えたいと思います!

スティックだったりガタっぽかったり、センターピンの状態がものすごく悪いので、交換します。
ハンマー関係の修理 (ファイリング、バットスプリング全交換、ブライドルテープ全交換、バットセンターピン全交換)

修理を進めていくために、古いバットスプリング、ブライドルテープ、フレンジを取り除きます。

結構センターピンが抜けてきてて、なのにスティックなので、ブッシングの状態が気がかりです。。

ハンマーが、なんだか表面がボコボコしていて、溝もつぶれてて、ガタでブレれ打っていたからなのでしょうか。。
これだと、発音が悪くなってしまうので、

きれいに整形します。
せっかくレンナーのハンマーヘッドが付いているので、これでよい方向へ向かうと思います!

年数が経ってきて、力が無くなったスプリングを交換します。

ブライドルテープも一新しました。
これで明日、本題のセンターピン交換を行っていきます!

交換していくに、左右差が二番手以上あるものもあったり、過去にもセンターピン交換されていたのか、かなりバラついていて…
このアトラスの一番の気がかりな点でもあったし、当たり前ですが、ガタでもスティックでもダメで、センターピンの状態が適切であることは、正しく弦を打つため、正しく発音するためのスタートラインの基盤の作業だと思っていて、基礎の基礎をかためるため、慎重にセンターピンを選びながらの作業となりました。

センターピンの交換が終わりました!
素直なピアノなのか、作業自体、慎重ながらも大きな困りごともなく進んでいます。年末の娘さん一家の帰省には間に合いそうで、そして、とても仲の良い先生ご夫婦にまたお会いできることが、楽しみだったりします。あとすこし、しっかり修理して、きっちり本体に合わせて、このアトラスを造った方々が追求していたものを、壊さないように調整していきたいです。
ハンマーレールクロスも貼り換えます。
古いクロスをすべて取り除いて、

新しいクロスを貼り付けて、

アクションに取り付けました!
ハンマーの取り付けは慎重に行っていきます。
まず、ハンマーの取り付けをして、走り、間隔、捻れなど、しっかりみていきました。

木製のアクションなので極力何度も同じところのハンマーを取り外さなくて良いように気を付けて、アクションの修理が終りました!
納品まで、増し締めなど気にかけながら、念のため、何度か見直します。
外装

お客様のお家で見た時、たぶん表面的な汚れだろうな、と思って、
やっぱり軽く汚れていただけで、パッと見の印象より磨きやすく、さっと磨いたら、きれいになりました。
鍵盤のクリーニング

『汚れが気になるのよ~』とおっしゃっていた鍵盤もお引き取りして、きれいにします。

白鍵はバフをかけて、黒鍵は艶消し仕様だったので、クリーニングしました。
小さなお孫さんも安心してピアノに触れますね◎
これで西条市・アトラスFA50の修理が完了しました!
お届けは来月となってしまいますが、何となく、センターピンを修理したことで、鳴りとか、反応の良さとか、かなり良い方向にいく気がしています。本体にばっちり合わせて、あるべき姿に戻して、皆さんに喜んでいただきたいです。
お届け
ピアノの点検の時に迷ったので、お届けはナビなしで、余裕な気持ちだったので景色をみると、ほんとに自然豊かなで空気のきれいな、せわしい感じのない、とても良い所です。
お伺いしていた学校の先生方もご紹介であったり、息子さんが高校の一つ下の学年でいらしたり、家紋が同じだったり、縁の感じられるお家で、また、先生ご夫婦のお人柄と、実家に似た雰囲気で、お届けが楽しみでした。
お伺いすると、すでにいろいろなお気遣いが感じられて、お伺いを待ってくださっていたようで、作業にも気合いが入ります。
まずは、掃除から。
バケツに水をお借りしたら、水が温かくて。
工房で作業するときでも水なのに、水と思ったら温かくて、もう、お気遣いに泣きそうで、しょっぱなから全開で掃除しました。
くたびれていたパンチングを新しくします。

アトラスの響板のマークをみるたび、首が痛そう…と思ってしまいます。

アクションをセットして、作業を進めます。
ダンパー位置はよさそうで、ホッとしましたが、ハンマー位置修正が必要で、まだまだ第三メーカーは、足りていないところがあります。
もちろん、しっかり本体に合わせました!
第一整調をしていると、『第一整調のあと、もう一度整調した方がいいよ』と、感じたので、もう一度整調をしました。変な話ですが、勘みたいなのがピピっとくるときがあって、二度目やりながら、『いまやるべきだった』と感じて、直感も大事かな、と思います。
二度目の整調が終って、二回調律して、本整調を行いました。ほとんど整調は大丈夫で、いつもより時間はかかりましたが、無事に作業を終えました。

お届け前、いつも修理のお届け前は緊張して、第三メーカーなら、なおさら、なのですが、なぜかお引き取りの段階で、かなり良くなる確信がありました。
調整を追っていき、二度目の調律をしていると、弾きやすさと楽器の響きがみるみる生きてきて、よくなったと思います。
第三メーカーのピアノは、個々に差があって、大手メーカーより、画一的でない分、正しいところにあわせないと、成立しないこともあります。
いままで、『なんでー!』と想うこともたくさんありました。なので、個人的に、第三メーカーに対応していける技術は、対応できる幅を、より一層広げるし、第三メーカーに対応できる技術が、本物の力だと思っています。
まだまだ経験も足りてなくて、今回もこのピアノから、たくさんのことを学ばせて頂きました。
第三メーカーも、正しい状態だと、しっかりppが再現できて、豊かな響きと、軽やかな弾き心地になって、改めてどのメーカーも、グランドでもアップライトピアノでも、そのピアノの一番まっさらで、ゼロな状態が、弾き手とピアノにとって、一番ストレスがなくて、ピアノで弾きたいこと、再現したいことができるピアノなのではないかな、と思いました。そういうピアノに仕上げて、お客様に喜んで頂きたいです。
最後、ペダルです。

まさかのメッキつきのペダルですが、

振り絞って磨きました。
『ペダル、ピカピカになるんやね!』と、驚いていらして、そうなんです、頑張れば、光るんです。
最後に
『きれいになった♪これで孫がきても大丈夫になったわ、こうやって弾きよんよ』と、動画で見たお孫さんの手つきを真似ながら、暮れの帰省を楽しみにされているご様子や、『今考えても、大手メーカーより高かった知らないメーカーものやけど、いいものを思いきって買ったんよね。孫も使ってくれるし、また来年も調律にきてね』と、修理をきっかけに、また、ピアノが活躍することがうれしくて、早くお孫さんたちに会えるといいですね♬
点検から、お孫さんのために、と、その場でご夫婦で大きな修理を決めて下さり、また、何から何までお心遣いいただき、本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします!

