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松山市から移動、ウェルト&クロイツェルPU120WDの作業まとめ
いきさつ

長年、お伺いさせて頂いていて、この度、関西方面の娘さんの新しいお家に移動させることになったピアノです。
家族の皆様で大切にされてきたピアノで、特にお母様がご購入の時からとっても大切に想われて、購入より使ってない期間も、毎年調律をされてきました。
そんなピアノなので、娘さんもどうしてもこのピアノをお家に迎え入れ、レッスンを始めて一年経って頑張っている小さな娘さんに弾いてほしい、ということで、消音器の取り付けと修理をして、お納めすることになっています。
このピアノ自体、同じパコやグラチアのもの中でも、かなりきれいでいい方なのですが、経年変化や部品の劣化、毎年バットスティックを繰り返してしまって、ここ数年はほとんど弾いていなかったので、状態はお伝えしたうえで、積極的に使用するときにいろんな方向で考えていくお話になっていて、お伺いの時コツコツ修理しつつ、状態を維持していました。
ご主人様、奥様とお話させて頂いて、娘さんがこのピアノがいいといってて、お孫さんに弾いてもらいたい、というお気持ちが強く、今回、修理をさせて頂くことになりました。
とてもおおらかなご夫妻で、これまでのお伺いの時、奥様にはほんとによくして頂いていて、娘さんのご結婚や、ご主人様のご活躍、お孫さんが生まれたこと、毎年お聞かせくださるご家族のお話がとっても幸せそうで、毎年9月が楽しみだったくらいです。
移動すると決めた時にもわざわざこれまでのお礼のお電話を下さり、先日修理の打ち合わせにお伺いさせて頂いたときも、ご夫婦で温かく対応して下さり、最後お二人で玄関まで見送って下さって、『いままでありがとうございました』と、お心遣いいただいて…。

これからまたピアノが活躍していくのでいいことなのに、やっぱり寂しかったりもしていたので、そのお言葉にこらえきれないものありましたが、毎年のお伺いがお客様もとっても楽しみにして下さっていたようで、嬉しかったです。
そんなご家族のピアノなので、もうこの先お伺いできないかもしれなくても、持って行った先ですぐに修理になったり、弾くのに困らないよう、そして、あとの調律師さんが気持ちよく引き継いで、お母様が護ってこられたピアノを同じように大切にメンテナンスをしてくれるよう、精一杯作業したいと思います。
中のクリーニング
ピアノの状態を確認します。
ジン線になりやすいピアノですが、一切なく、大丈夫そうで、裏を掃除します。
裏はさらっとしたホコリで、すぐにきれいになりました。G的なものも一切なく、ほんとにきれいな状態です。
木目のピアノで、外装は塗装など行いませんが、中のクリーニングをします。

ピアノを寝かせて、内のクリーニングを行います。

虫やGは全くいないですが、ホコリはありますから、弦の下も、しっかりきれいにします。

毎年掃除していましたが、届かないところもあるので、しっかりきれいにしていきます。

毎回磨いていたので、ペダルは簡単にきれいになります。

雑音の処理などしながら、分解したペダルを組み立てました。

駒ピン?みたいなのが挟まってて、気が付かずそのまま長距離移動したら、何かのはずみで謎の雑音になるかもしれなくて、底板を外してよかったです。

ピン的なものも掃除して、ペダル窓のクロスも交換しました。事前に娘さんとお話させて頂いて、茶色に変更しました。よいですね♬

ピアノを起こしました!

チューニングピンや弦、プレッシャーバーもしっかりピカピカになっています。

特にフロントがくたびれていて、折角なのでパンチングも新しくします。

一気に若返った気がします。

ダンパーを本体に合わせるので、アクションボルトも磨きます。

鏡のようになりました。
アクション修理

アクションを解体します。

このピアノには、高級ハンマー・レンナー社製のものが使用されているようです。
パコやグラチアは、ロイヤルジョージだったりして、黒鍵も黒檀が付いていたので、特別仕様なのでしょうかね。

ジャックストップレールの上に落ちているのはスキンが削れたものですが、掃除もしっかりしてきて、環境も良かったので、きれいなアクションです。

ハンマー関係に問題があって、完全に動きが止まるものや、ゆっくりバットフレンジが戻って、ハンマー自体の動きが鈍いです。
今までのお伺いの時の治していたものは、今でも動きが軽快なので、原因もはっきりしていて、センターピンの交換は必須です。

キャッチャースキン・バットスキンも人工皮革で、どんどんすり減ってしまっていて、こちらもしっかり修理して、心配なく使える状態にします。

アクションの解体が終りました。
修理に入ります。
ジャックスプリングを交換します。
時々なんだか斜めに入っているのももあったり、修理に注意が必要なようです。

古いジャックスプリングを取り除きます。結構折れやすくて、慎重に。。
時々、とんでもなく接着剤が付いてて、そういうのもきれいにします。

なぜ斜めのものがあるのか、やってくと分かるので、工夫していいところにスプリングを埋め込みます。いつもよりかなり時間がかかりますが、復元しつつ、頑張ります。

スプーンも磨きつつ、

バックチェックのスキンも、

からみついたスキンは意外と取れずらいのですが、きれいにします。

バットフレンジの動きが悪いので、ウイッペンやジャックも警戒して修理を進めていたのですが、かなり良好で、安心しました。

ウイッペンの間隔をあわせました。
木製のアクションなので、着脱は最低限にしたいところですが、定まりにくくて難しかったです。
ダンパーの作業に入ります。

スプーンが当たる部分に穴が空きそうなのとそれ以上になんだかロッドが当たる方が気になって、ロッドをみると、

ガザガザでベトベトで。。

なんとなく府に落ちて、ロッドをしっかり磨いて、アクションに取り付けました。

ダンパーレバークロスを剥がしました。

裁断して、ぴったり貼り付けて、よい感じです。

ダンパーをアクションに取り付けます。
本体がないとダメな感じなので、後日、本体に合わせて作業します。
工房では、松山市から移動、クロイツェルPU120WDの作業を行いました。

毎年調律にお伺いさせて頂いていましたが、部品の劣化は避けられず、18年前はなかったけど、浜松から戻って、6年前に再度お伺いさせて頂くようになった時には、すでにキャッチャースキン・バットスキンの劣化が進んできていました。
この感じの人工皮革は、使用が増えれば、キャッチャースキンはどんどんすり減っていきますし、バット側は間違いなく更にスキンが毛羽だって、ジャックがきちんとした位置に戻るのを妨げてしまします。

ハンマー関係は、キャッチャースキン・バットスキン・バットフェルトの交換と、バットスプリング、ブライドルテープ、センターピンの交換を行います。

フレンジを外して、交換部品を取り除きました。

昨日のうちにどうやって剥がしていくか、いろいろ試していたのですが、朝早くから起きて、戻ってきてもひたすらやって、何とか一台分、作業を終えました。
カワイよりも大変だったです。
古い接着剤が完全に取れているかとか、取れ方とか凝視するので目がゴロゴロして、集中できなくなってしまったので眼鏡に変えて、考え事ができなくなるくらい集中するので、修行のようでした。
最後10本くらいになると、ようやく終わりのカウントダウンができるくらい、自分の為にはできない、お客様の、やっとピアノを迎えることのできる小さな女の子のためだからできる作業で、やる気と根気を動員して、やり終えました。
このピアノをこの先、普通に使っていくには必要な作業で、どうしてもこのピアノがいい、というお気持ちで愛媛から運んでいくので、ピアノの傾向も含めて、今回どこまでやっていくかなど、見極めて作業していきます。

昨日きれいに剥がし終えたので、スキンなどを貼り付けていきます。

スキンは自分で裁断して貼りくけていくのですが、きれいに貼り付けるのは、けっこう神経を使うのです。

キチンと接着されてないと雑音にもつながりますし、切り口とか、幅とか、長さとか、ただ貼りかえるのではなく、見た目もきれいな仕事を目指しているので、裁断も貼り付けも、真剣そのものです。

やっと一台分、貼り付けが終りました。
まだまだコツコツ作業は続きますが、一つ一つ、修理に意味をもって、ピアノを待つ方を想って作業できることは、技術者として、幸せなことです。

このピアノは、何かを外す、ということが、ほかのピアノよりもリスクが高く、今の自分で手を出せるか、を問いながら作業しなくてはなりません。
解体して元に戻せない、なんてことになったらどうしようもないので、自分のスキルとも相談しながら作業を進めます。
ある意味繊細で、底板を外すのすら、マフラーの取り付け方で一瞬考えたくらいで、ピアノを起こして、雑音しないか、マフラーペダルはきちんと作動するか、ちょっと心配でしたが、全く問題なく、一安心です。
ダンパーも、かなり頭を使いましたが、解体前より正しい位置に修正しました。

バットスキンも全部貼り終えてるはずだったのですが、相当慎重に本体の作業を進めて、今日は片側だけになってしまいました。
バットスキンがを交換すると、かなりタッチがよくなるので、娘さんもお子さんと一緒に弾いたら、『前より弾きやすい♬』と感じて下さるといいな。

バットスキンを貼り終えました。
たるむとダメだし、しっかり引っ張ってはりつけます。
バットスキンは、ガサガサだとジャックが静止位置に戻れなくて連打できなくなったりして、弾くのに差し障ってしまいます。
交換すると、かなり弾き心地もよくなるので、最初からいい状態で練習できて、きっとこの先も心配なく練習できると思います。

バットフェルトも貼り付けます。
バットフェルトも自分で裁断するのですが、ほんの少しずつ幅広らしく、ヤマハやカワイだと一本で行けるのに、一本じゃ足りなくて、焦りました。
いつも余分に在庫してても、いつにまかなくなることもあるので、ぱっと見見つからなくて、一瞬、心臓がバクバクしました。

さっとファイリングして、

バットスプリングも交換しました。

ブライドルテープを交換して、いつも見るような感じに近づきました!
残るはハンマーバットのセンターピン交換です。
他の状態から見ても、基本、かなりきちんと管理されてきたピアノですが、バットのセンターピンは、どうにもよくなくて。。他が万全でも、この部分の動きが悪いと弾き手のニュアンスも伝わらないので、正しい状態でなくてはなりません。

センターピンを全て交換して、ハンマー関係の修理が終りました。
小さな子供さんがレッスンしていくのに、弾きずらさや違和感があると、せっかく頑張って練習しても成果が出ずらく、小さければ小さいほど、なかなか弾けないのがつらくなってしまうものだと思います。最初から素直に音が出せるピアノであることは、上達にもつながることだと思っています。
ピアノの先生も、ピアノを迎え入れられることを楽しみにされているようで、アコースティックピアノがくると、もっと上達されるのが容易に想像できるくらい、今でもコツコツひたむきに練習をされているのだと思います。
『おじいちゃんとおばあちゃんのお家のピアノ』が、修理されて『お母さんと私のピアノ』になるのはあと少しです。
これからがさらに大変で、実際アクションを組んで鍵盤を入れて動きを見て見ないと、なにもわからないですが、今までより弾きやすく、いい音に仕上げられるよう、頑張ります。
アクションを組み立てていきます。
レール類を取り付けて、

ハンマーを取り付けて、間隔や走り、捻じれを見ます。
いろいろ大変で、工房でも見ましたが、本体に合わせても、しっかり見なくてはならない感じでした。

本体に合わせて、もう一度見直して、ブライドルテープを取り付けました。
解体してブライドルテープを外すとき、ワイヤーのところが狭くてすんなり取れなくて、ということは取り付けるときもかなりやりずらく、テープを通すところを広げながら取り付けました。
消音器を取り付ける前に整調を行います。

鍵盤を入れるとこんな感じで、弾ける感じではないのです。

このメーカーのピアノは、ピアノによっての個体差が大きく、ピアノによっては働きが出なくてなのか、ものすごく深くしてたり、打弦距離が変だったり、バックストップがとんでもなく広かったり、色んな状態のものがあるので、相当警戒して、ここ数日は、○○だったらどうしよう…といろんなことを想定して、頭がいっぱいでした。
元々、再度お伺いさせて頂いた最初の年にしっかり見て、大きくおかしな整調ではなくなったけど、スキンを交換したことや、一度アクションを解体することやクロスやフェルトを交換することは、ヤマハやカワイでも変化があることなので、いつもアクションと鍵盤をおさめて音だしをするときは、緊張します。
一度すべての工程をさらって調律すると、弾き心地がガラッと変わって、これだと小さなお子さんが弾くのにも、アコースティックピアノを運んできてよかったね!って思っていただける状態だと思います。
今日は調律と整調を何度も繰り返しましたが、この状態をあまり変えることなく消音器を取りつけなくてはならないので、まだまだ緊張は続きます。
消音器の取り付け

愛媛に戻ってからはあまり需要がなかったのですが、今回はよくつけていたものとよく似たちょっとずつ違うメーカーさんのものでした。
まずは、バーの加工からです。
今では、ヤマハやカワイはだいたい仕様によって、ブラケットの部分が加工されているのですが、今回はメーカーさんに加工済みのものがないので、切れ目のないタイプを加工します。

ブラケットが当たらないよう、中音側のところをコの字型に加工して、高音側を少し短くしました。
ここの加工が中途半端だと、可動域が十分でなくて弊害が出たりします。
昔はドリルで穴をあけてやすりをかけたりしてたのに、すんごい楽にできるように進化してて、シールの貼り方や切り口もきれいにしたいところなので、ちいさく感動しました。

バーを取りつけました。
消音の取り付けで、バーの直線はものすごく重要で、相当いわれてきたで、今回も何度もアクション出し入れして確認して、やり直して、時間がかかったけど、大丈夫そうです。

カワイでも棚板に加工はいらなくなったのに、中音のところでセンサーが当たってしまうので、加工してから、

センサー位置決めて、取り付けて高さを決めました。

レットオフを消音器が付いた状態にやり直してから、もう一度整調しなおして、調律を行います。
解放時にダンパーが当たらないかとか、雑音のあるなしやタッチや音の鳴り方の確認したいのです。
雑音もなく、タッチもちゃんとppもffもでるピアノのままなので、心底ホッとしました。
初期設定も行なって、消音器が取り付きました。
よくつけるピアノではないので、色んな大変だったパターンが思い起こされて、眠れない毎日だったので、これならヤマハに取り付けた時と変わらない感じで、消音器が付いているピアノ独特の感じもないと思います。
これからは夜でも気兼ねなく弾けるように、と消音器を取り付けて迎え入れるので、お母様も、夜、弾きたくなったらいつでも弾けますね♪
後は鍵盤を磨いたり、なので、ちょっとでもなじむよう、出荷までなるべく調律して整調していこうと思います。
鍵盤のクリーニング

パッと見はきれいでも、小口など結構よごれていたので、

きれいにしたり、

黒ラックを塗ったりして、鍵盤のクリーニングのクリーニングが終りました。
今日は敬老の日で、自分が幼稚園の時、敬老参観日に島からフェリーで来てくれて、祖母がみたことないワンピースを着てて、とても似合っていたのを覚えています。
このピアノも、これから先、納品されてピアノを見ると、おじいちゃんとおばあちゃんの家にあったころ、ご帰省されたときにお母さんが弾いてたご様子や、ピアノがあったころのお部屋のこととか、ピアノの想い出やおじいちゃんおばあちゃんとの想い出として、小さな娘さんがふと想い出したりするのかな、と思ったりして、想い出が大切に記憶に残っていくといいな、と思いました。
仕上げ

天屋根のフェルトを貼り換えます。

フェルトの下がすぐにピン板なので、コツコツ剥がして貼り換えます。

マフラーも、

枕のフェルトも厚みを合わせて貼り換えます。
絶妙なバランスでマフラーがかかったりかからなかったりすることがあるピアノなので、なるべく元と同じ状態の方が安全な気がします。

少しずつ組み立てて、マフラーの掛かりかたも大丈夫でした。
まだもう少し整調や調律、整音を繰り返します。
ウェルト&クロイツェルが明日出荷なので、出荷前、最後の仕上げを行いました。

鍵盤をあげて、入念にほこりを飛ばしました。

もう一度、整調と調律、整音を行いました。
比べると、同じメーカーとは思えないくらいのタッチ感と、まとまった音になりました。

消音器も音漏れがないかなどしっかり確認して、初期設定をもう一度行って、完成しました。
これからは新しいお家で、時間を気にせず思う存分、本物のピアノでたくさん練習できますね。
ピアノが届いたら、嬉しくてぴょんぴょんしたりするのでしょうか。
いろいろ思うと、かわいくて仕方ないですね。
長年、本当にお世話になり、本当にありがとうございました。
ピアノが来ることを楽しみにされていると思うので、無事に納品されて、これからは新しいお家で、ご家族とともに豊かな時間を重ねていけますように。
納品されて
先日納品されたクロイツェルの調律へお伺いさせていただきました。

関西方面なので、明石海峡大橋を渡ります。

とんびがやんちゃらしいです。
到着すると、なんと愛媛のおばあさまがいらしてて、びっくりでした!
元々、そのころ娘さん宅へ来る予定はなかったそうですが、調律に合わせて愛媛からいらしたようで、もうお会いすることはないと思っていたので、ほんとにうれしかったです。
なにかあったら、と思って、色んなものを持ってお伺いしのですが、ピアノは調律も調整関係も消音器も、全く問題なく、安心しました。
レッスンがどんどん進んで、とにかく早くピアノを迎え入れたかったようで、ピアノは先月、先に設置されて、お客様たちは、一週間前にお引越しだったそうで、お姉ちゃんが練習するのを、弟くんも気になって、そばにいっていたりするようで、ピアノが家にあるって、いいですね!
毎日コツコツ練習していらっしゃるようで、発表会もかなり難しい曲にチャレンジしているようです。
お母様も、『早く持ってきたくて、ピアノがきてからいっぱい練習してて、よかったです。ありがとうございます』と、やっとピアノが迎え入れられて、娘さんが思う存分ピアノを練習できるのが、うれしいご様子でした。
『遠くから、いままで、ほんとにありがとうございます』と、過分にお心遣いいただいて、恐縮ですが、私の方こそ、毎年の調律だけの関わりなのに、いつも温かく迎え入れてくださり、こんな風に受け継がれて、心から嬉しく思います。

長い間、本当にありがとうございました。
ピアノは心配なく弾いていける状態になっているので、これから先も、ご家族の皆様で、大切に弾いていってくださいね。
