今治市・ヤマハYUA、作業まとめ

いきさつ

調律には定期的にお伺いしていて、その度、バットスティックを繰り返してしまって、センターピンの交換をしてすぐは大丈夫でも、次にお伺いすると、怪しくなったり、他に増えていたり、ご自身も、弾くのに困ることがあった状態でした。今回の調律のご案内の時のに、お客様から、『この先まだまだ、おばあちゃんになっても弾ける限りずっと弾いていくので、しっかり治したい』ということで、今回、オーバーホールすることとなりました。

ご自身は大人になってもレッスンをつづけていらして、オーバーホールすることとなって、その間のピアノをどうするか、となった時、ご負担も増えてしまうのに、迷わず『アコースティックピアノで』とおっしゃってくださいました。
なので、貸出ピアノを積んでから、お客様のお家へお伺いしました。

ピアノが搬出されていくとき、『40年くらいここにあったんですよね…』としみじみ言うと、いつもとても明るくて、ポジティブなお客様が、涙目になって『いってらっしゃい』と泣いていらして、ピアノは記憶の限りその家にあって、一緒に過ごしてきたわけですから、しばらく離れる寂しさがあふれてくるのも当然だと思います。一層、責任を感じます。

お客様は、ピアノが出るか不安でいらしたようですが、立派なピアノですが、運送屋さんは丁寧に運び出してくださり、大切なピアノを大切に扱ってくださるので、安心してすべてお任せできて、お客様も安心なさっていました。

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(お客様撮影)
お客様が、ご旅行でご不在のお母さまに…と、担いで運び出されピアノの様子や、ピアノが搬出されてぽっかり空いてしまったピアノのあった場所など、撮影されていました。
『ばぁばがいたら、泣いていたわ~』と、ご家族でピアノを大切にされていたことが伺えて、幸せなピアノです。

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そして、貸出ピアノが設置されました。
お持ちのYUAより、すこしおばあちゃんなピアノですが、『よろしく』といって、温かく迎え入れてくださいました。

子どもさんに関わる責任のあるお仕事をされていて、ご多忙なので、また日を改めるのは難しそうだったので、一度、YUAを工房にいれて、そのまま戻って、調律することになっていました。
その間弾いてみてくださっていたようで、『たのしい~、きれいな~』といってくださって、ほっとし、きっちり調律させて頂きました。
心配なくお使いいただけるよう、必要な修理はさせて頂いているので、オーバーホールの間、大好きなピアノを楽しんで頂けると思います!

お暇すると、またすぐにピアノの音が聴こえて、それがとてもうれしかったです。

いろいろな決意を胸に、工房に戻りました。

作業前に

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搬出前日、クリーニングすると分かっていらしても、ご自身できれいにしてくださり、きっと別れがたかったのでしょう。そのお気持ちを思うだけで、こちらまで泣きそうになります。

たまに落としキズもありますが、想い出はそのままに、他はきれいにクリーニングしていきますね!

流石に裏は、少し汚れていますので、

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お疲れ様、の気持ちを込めて、一度、きれいに掃除します。
毎回、掃除はそんな気持ちで、労う気持ちというか、好きな作業です。

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ねずちゃんの落とし物やG的なやつもあったりして、また、X支柱なので、いろんなものを駆使しながら、残し物のないよう、きれいにしました。

昔は、132センチの大型機種も、一人で寝かせられていたけど、今はちょっと難しくなってしまったので、土曜までは、このまま磨いたりして、作業を進めます。

こちらのピアノは、張弦、ハンマー交換に加え、アクションの加工も行います。
本来なら、当時の設計から加工することは、設計したお方の意に反することですし、お客様にとっても、感触が変わることですので、YUAをお持ちでも、不具合がなければ、そのままでいいと思っています。なので、YUAをお持ちのお客様皆様に必要ではないのですが、今回は、不具合をお客様が認識されていて、タッチ感がいままでのものと変わることをご理解に上、作業させて頂くことになりました。

大きな変更も伴うこととなりますが、泣いていらしたこともあり、『クロスも、今と同じ赤色がよろしいんではありませんか?』とお聞きすると、『うん、あまり印象を変えたくない』とのことで、お客様がこれまで共にしてきたピアノを、自分本位に造り変えるのではなく、なるべくお客様の記憶の中の新品であった頃に、ピアノの時を戻せるよう、そこを軸に作業していきたいと思います。

4歳のころから、いまもずっと弾き続けていらしたピアノを、ご自身が決断されたとはいえ、いざ、少しの間、そばを離れるって、お客様は、いつもと違う風景に、寂しさが大きいだろうな、と思います。それほど大切なピアノを任される責任を改めて感じ、お戻しした時に、『また、この先40年、最期の時までよろしく!』と受け入れていただけるよう、精いっぱい作業させていただきます!

外装

工房では、今治市・ヤマハYUAの本体を磨きました。
恥ずかしながら、毎回のお伺いでは、調律と掃除、できる限りの整調はどのご家庭へお伺いしても普通に行うことですが、加えてスティック修理に追われて外装が後回しになってしまって、ペダル磨きしかできておらず、なので、今回しっかりとクリーニングさせていただきます!

天屋根は、すこし擦り傷がありまして、
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とりあえず、ばらさず磨きます。
特に前屋根は、私はつけていた方が磨きやすくて。。
過去、ばらして磨いてて、なかなか傷が取れなくて、圧をかけすぎて、ポリッシャーの回転で、屋根が飛んでいきそうになったことがあって。。とっさに止めて事なきを得ましたが、機械とは、恐ろしい側面もあります。。。

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飛んでいく心配もなく、きれいに艶が戻りました◎

屋根の内側も、

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きれいになりました。

つけたままだと、蝶番とか、蝶番の際とか、磨けないので、ばらしていたら、

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『YUA』を発見!!
私、ここに機種が入っているピアノ、初めてかも!
いや、いつもいっぱいいっぱいで、気が付かなかっただけかも?
初めての発見に、ひとりでうれしくなっていました♪

それはいいとして、足元はちょっとしっかり汚れていて、

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お客様が、『足元までは…』と気にされていたのですが、そもそも私が何回かのお伺いの時にきれいにできていたら良かったのですが、スティック修理の方が優先度が高く、手つかずで申し訳ありませんでした…

なので、ここもしっかりとみがきました。
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もちろん足をとった時にも、もう一度磨きますが、気にされていたこともあって、はやくきれいにして差し上げたかったのです。

このような角のホコリも、
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ちゃんときれいになりましたから、

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これからはさっと磨けば、この状態にできますよ◎

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親板も、ポリッシャー④のおかげで、立てたまま磨けるようになったので、両方の親、一通り磨きました!
昨日のC3Bも、今日のYUAも、あらゆる面で作業しやすくなりました。手首も痛くないです◎

YUAは、当時の最高機種にあたるピアノで、中はもちろん、外装も、細かなこだわりがあって、デザインでの段差?が他の機種に比べて多くて、そこにホコリがたまるので、磨くのもちょっと大変です。でも、角が汚れていると、途端にピアノ全体が汚れて見えてしまう気がします。
黒の角は、汚れ目がたつので、昔から、いつも黒くあるよう、気にしているところです。

今日の磨きで、ピアノが寝かせられるので、ピアノを寝かせたら、張弦の準備にはいります。

工房では、今治市・ヤマハYUAを寝かせました。
寝かせないと先に進めないので、早く寝かせたかったのです。

底板は、大丈夫そう!
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こんな感じで、凝ったデザインのペダル周りです。

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後々、たまったホコリもきれいにしていきますね。

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ハンドマフラーの取り外しにちょっと頭を使いながらも、棚板も外しました。
取り付けるころに絶対どうだったか分からなくなりそうなので、ちゃんと復元できるよう、写真も残しておきました!

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足元や、妻戸台など、再度磨いて、

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きれいにできるところは、きれいにしました!
比べると、じわっときれいになっていっているのですが、本格的には、弦を外してからとなります。

次に、今治市・ヤマハYUAのペダル周りの磨きを行いました。

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前土台を磨いて、押し固められたクロスも交換していきます。

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もちろんクロスは赤です。え、なんか、めっちゃきれいですね◎
 

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毎回掃除をしていても、やっぱり外すとほこってたりするので、きれいにしていきます。

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外せるものはすべて外して、

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天秤棒や、ペダルの軸のブッシュなど、パーツ一つ一つの汚れをきれいにします。 

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ペダルもバフをかけて、各箇所に必要な処理を行って、元のペダルの状態に組み立て直します。
クロスも新しいものにしました。
解体して足元を磨けたりきれいにできると、ほんとにさっぱりしますね。
また元のあるべき場所に戻ったら、もう動かすことはないだろうから、徹底的にきれいにしました!
  

まず、外装パーツを磨きました。
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鍵盤蓋から。
お父様の盾が落ちて傷がついてしまったようですが、それはそのままに。
傷ができた理由も覚えていらっしゃるのは、それだけ大事にされていて、ショックだったけど、それも大事な想い出です。

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内側のエンブレムも、磨き直して、

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表も丁番も、ピカピカになりました。

上前板は、分解して、きれいにしていきます。
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トーンエスケープの裏側にあたるネット?は、ホコリがたまっていますから、

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しっかりホコリを飛ばします。色まで変わりました。

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ここはお客様では掃除できないので、

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丁寧にホコリをとってから磨きます。

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譜面台を出し入れするときの雑音の処理もして、ギーギーいわなくなりました!

張弦

まずは、張力を落とします。

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せっせと戻すので、体が温まります。(わりと寒がり)

チューニングピンから外します。
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この作業は、ちょっとまだまだ師匠のようにいきません。。傷つけないように、なるべく手早く…

低音の弦を外していきます。

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念のため、順番に保存します。そろそろ弦を注文をしなくては。

低音の弦が取り外されて、

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全部弦を外したので、とりあえず、全体をさっときれいにします。
長年たまった駒の上のホコリは、
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いつもクリーニングだと、駒の上は難所ですが、
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弦がないので、作業しやすいです。

汚れなんかも、

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きれいになりました!

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少しずつ張弦できるように、作業が進んでいます。

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チューニングピンを取り除きました。

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二の腕が引き締まりそうな、ひたすら同じ動きでチューニングピンを取り外していきます。
この動きで、何かできないか、毎回考えるけど、まったく思いつかないです。。

88からの長い道のり、なんとか1までたどり着きました!

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いったい何本あるのか気になって数えてみると、225本でした!

あとは、時間をみつけてアグラフを磨いたり、枕のフェルトを貼り替えたりしていくと、新しかった時のように、明るい印象に戻っていくと思います。地道に作業を進めていきますね!

フレームフェルトを取り除きます。

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ただ剥がしただけだと、こんな感じで前のが残ってしまいます。このまま貼ることはできないので、慎重に古いフェルトを取り除きます。 

毎日何かしら剥がしてるな~と思いながら、古い接着剤が金粉からきれいに剥がれるのがちょっと好きだったりします。

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程よく研磨しました。

弦を張っていると磨きにくいアグラフも磨きましょう。

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コツコツ穴の中まで磨いています。

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ふと、お客様が一番最初にピアノの中を見た時って、いつなんやろか、と思いました。お家に来たのが4歳の時っておっしゃっていたから、幼稚園だろうから、そのとき?それとも調律は幼稚園とか学校行ってるときだったら、大人になってから?もしかしたら、修理のご説明の時が初めてだったのかも?案外調律時、小さなときは学校なんかでご不在だったりして、中を見ることはなかったりするのかな?と、きれいになっていくピアノをみて思って、きっと新品の時は、こんな感じだったと思います!

 

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チューニングピンを抜くとき、元々亀裂が入っていたり、ピンについて来たりしていたので、ピンブロックも交換することにしました。一つ一つ取り除いていきます。今日はちくわに見えました。

全部取り除けたら、新しいのを打ち込んでいきます。

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全部打ち込みました。

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ピンの太さにあわせて、穴をあけます。ピン板に貫通しないよう、ドリルが暴れないよう、気を付けて作業します。

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全て穴をあけ終りました。後は、フレームフェルトを貼るだけです。なるべく外観は変更なしで修理を進めていくお話でしたが、元々がオリーブ色のフレームフェルトだったのですが、同じ厚みのものが手に入らず…部品の卸会社さん3社にあたってもその厚みだけなく、国内最大級の大阪のフェルトの問屋さんに直接問い合わせても、色はあっても、その厚みは今は作ってなくて、お客様にご事情をお伝えすると、『ないのならばなら全然大丈夫です!お気持ちだけで嬉しいです』と、申し訳なさが前面に出た私に気を遣ってくださり、優しいお言葉に救われました。同じ厚みの赤いフェルトを貼り付けます。

中音の始まりあたりは、弦を張った時、フェルトがよれてきやすいので念入りにちゃんとついたか点検します。

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前のもよかったけど、赤いフェルトもいいね、って思ってくださるといいな。


  

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よさそうな時間になったので、弦を張って行きます。  

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迫りくる日没の時間と戦いながら、とりあえず張り終わりました。
中音の終わりぐらいから腰が笑い出して、一瞬、とりあえず中音までで、巻線は後日…と頭をよぎったけど、流れで張った方がきれいに張れると思うので、痛いとか言ってられないです。今日のためにマッサージに行っておいてよかった!  

音が…というより、もう、体力と気力を使い果たしました。
きれいに張れているといいな。
仕上はまた後日。
アップライトなので、いま、どうか、わからないので、連休中も出たり入ったりだけど、早く仕上げたいな。

ヤマハYUAの張弦の仕上げの作業に入っていきます。  

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プレッシャーバーを磨きます。

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ネジまでピカピカになりました◎  
 

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プレッシャーバーを取りつけて、仕上ていきます。 

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チッピングして、チュニングピンの高さとか、しっかり合わせていきます。
他の音域をしてる時も、たまに戻ってきて音を合わせたり、張りたてですからね。 
アグラフがあると、ものすごく張りやすいけど、やはり難しいのには変わりなく、台数を重ねて、もっと確実なものにしていきたいです。

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全体、張力を上げて、チッピングして、巻口を大体合わせて、コキ上げ、こき下ろし、チューニングピンの高さを合わせて、仕上のベースを作りました。

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気がかりだった弦の枕のフェルトも、よれてなくて、今大丈夫なら、大丈夫だろうから、良かったです。

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こんな感じで、まだまだ全然あってないので、チッピングを重ねて、細かく仕上げていきます。
まだまだ仕上がりは遠いです。
今日仕上たかったのですが、朝からもう腰的にアレで、お客様の顔がうかびながらも、焦らず、ヤマハYUAの作業はここまでにしました。

 

まず、全音域のチッピングから作業を始めてます。
どこもそこまで変に落ちていることもなく、心配だった低音も大丈夫でした。
チューニングピンの高さや、コキ下げの具合や、チッピングしては巻口の位置を合わせるよう、いろいろな工程や角度、目線を変えて、ひたすら、自分の張った弦になんの言い訳もできないので、腰が痛くても、凝視してコンタクトの目が乾燥しても、とにかく今の自分ができることを注ぎ込みます。 

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高音です。

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次高音です。

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中音です。

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低音です。

アグラフがあるので、普通のアップライトよりものすごく張りやすいですが、ヤマハはオリジナルがかなりきれいに巻口とかあっているので、それと比べて、おなじくらいには張れていると思いたいです。
きれいな音に戻すために弦を張り変えているので、弦をきれいに張ることは、必然です。

『巻口が合う』のレベルは、技術者の目線によってかなり差があるように思い、価値観も様々なようです。
張れた結果に一喜一憂するのではなく、毎回同じように、無理なく安定した作業ができる確実なものを身につけなくてはなりません。
きっと昔の自分だったら、『弦を張れた』こと自体に満足して、作業した気でいたけれど、今は本物の張弦を見て、やればやるほどに、あのように張れるのは、神がかり的で、でも、たくさんの苦悩と積み重ねがあっての今だと思うので、私はまだ、届かないことに泣いていいほどの人間ではないと思います。
ただ普通に張れているのではなく、自分が張りたい張弦の理想があるので、更にもっと技術を磨いていきたいと思います!
 
とはいえ、チッピングしてでてくる音は、澄んだ豊かな音で、低音も、張ってる時から『おぉ~♡』って、感心する伸びやかな音で、すごくきれいな音の好きなお方だから、きっと喜んでくださると思います。
作業中、ほんっとに腰がきつくて、寝ようにもどの体勢もきつくても、でも、ピアノを見送ったお客様の涙がずっと胸に刺さってて、絶対に喜んで頂くために、きっちり仕上たかったので、弦を張って、仕上がって、ホッとしました。


ピアノを立てて雰囲気をお伝えしたいのですが、一人では無理なので、すみません。。
しつこい性格なので、建てる前に再度チッピングして、様々、見直して、ピアノを起こします。
ピアノを立てるのが楽しみです♪
 

もう一度チッピングして、見直しを行いました。

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昨日の今日ですから、音が…というところはなく、どちらかというと、自分の仕事の粗さがしというかで、もともと大雑把な性格なことは自分が一番よくわかっているので、最後の最後、詰めて、意地悪く、もう一度、結果と向き合います。
他人からみて大丈夫でも、自分はそうじゃなかったり、自分にはまだ目線が足りてなかったりするところもあったりすると思います。それでも、今できることはやりきりました。

そして、ピアノを起こす準備を。

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棚板の裏は、カビかだと思われるものが付いているので、  

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きれいにして、黒ラックを塗りました。
支柱とか、棚板のラック塗は、作業の区切りのタイミングでするので、昔から好きです。  

一旦ピアノを起こします!

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なんか、めっちゃいい音しそう!新品の時のような輝きに戻ったのではないのでしょうか!

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棚板を取り付けて、ハンドマフラーも取り付けました。
これがまた、元々もう取らないことを想定して取り付けられている感じで、それはそんなものだと思うのですが、ビスの位置目視できず、なんせ、手元が見えないので、転がっては再チャレンジの繰り返しで、半泣きでした。。

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ペダル、脚など、取り付けて、ピアノが起き上がりました!
お客様にとって、ピアノが寝ている様子は、新鮮であったかもしれないですが、いかにも入院中みたいで、いや、入院中なんですが、きっとどうなるか心配だろうから、早く起こしてたくて、ようやくピアノを立てられました。もう寝込むことはないので、安心してくださいね◎

 

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なんだかしっかしして…
工房は照明を足して明るくなったけど、この写真は、午前中にとれなくて、落ち着いた日没後の暗い時間に撮ったものなのですが、それにしても、ピシッとしたというか、まだまだこれからお客様と音楽を奏でていく希望に満ち溢れたようなものが感じられて、送り出すときに涙したお客様に、ピアノが応えたようで、胸が熱くなりました。

身近な修理でも、大きな仕事でも『お客様のために』という気持ちと、背負う責任は変わらず、一つ一つに悩み、越えて、その時には更に目線が上がって、越えた所ではまだまだだと思って、もっと厳しい道を行くこととなり、もっと楽な生き方ができたらいいのだけれど、もっとよく出来たら、もっと喜んで頂けると思って、結局厳しいほうを選んでいます。
お客様に喜んで頂けることが、私の生きがいです。

こうして無事に弦を張って、ピアノをたてられて、第一関門突破です!
これからまだまだ作業は続きますが、ハンマーの加工のため、一旦、ハンマーをおくる準備をしなくては!

アクション修理の前に

工房では、今治市・ヤマハYUAのハンマーを加工していただくために、準備の作業を行いました。

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YUAのアクションは、一般的なアップライトピアノとは、少し違っています。
こちらが、一般的なアクション(UXのもの)です。

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こちらが、YUAのアクションです。

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一般的なアップライトピアノのアクションにある、フレンジコードやバットスプリングがなく、代わりに板バネが付いていて、これにバットが当たって、ハンマーが押し戻されるシステムです。
連打性を上げられる目的で、当時の最高級機種にのみ採用された贅沢な仕様だったのですが、スプリングがないためか、年数が経て来て、ハンマーのスティックが目立つお家もあったりします。(全くスティックしてないお家もあります)
お客様も出ない音があることも認識されていて、弾くのにお困りで、タッチ感が若干変わることもご理解の上、やはり弾くのに差し障っていることと、雑音もするので、今回、一般的なアクションと同じ仕様に加工させて頂くこととなりました。

バットの加工は、Piano Refinishの柴田さんのお力を貸していただくことになっています。
より正確に、美しく、と思って、加工の依頼の相談させて頂くと、ご多忙にも関わらず、快く引き受けて下さり、加工のために治具なども考えて下さっているようで、本当にありがたいです。

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まずはハンマーを取り外します。
結構カビがやホコリがあって、これは後程きれいにします。
フレンジはいらないそうなので、センターピン交換まで、このままに。
ハンマーバットだけ、送ります。

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ハンマー交換するにしても、カビがひどいので、一旦きれいにしていたら、

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地味にパンクしかけているものがありました。
他もちょっと剥がそうとすると、簡単にこんなになる状態でした。
ハンマー交換自体は、今後のことを考えて、今やることになっていましたが、解体してみないと、ハンマーがパンクしかけなことには気が付いてなく、これをみて、修理のタイミングだったのかもしれないな…と、しんみりしました。

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加工していただくために、スキンを剥がします。

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シールのような、うまく剥がせないと厄介になるタイプでした。

左がYUA、右がUXのバットです。

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バットスプリングのための溝と、

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スプリングコードのための穴をあけていただきます。

YUAのハンマーを送る準備ができました。
柴田さんに、きれいに加工していただくために、一旦神奈川に送らせて頂きます。
その間に、他との兼ね合いも見ながら、ウイッペンやダンパーなど、出来るだけ作業をすすめます。

今治市・ヤマハYUAも、作業を進めます。

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アクションを解体します。

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そうか、フレンジコード、ないので、貼り付けないと。

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使い道はないのかもしれないけど、ずっとピアノの一部であった板バネを、勝手に処分なんてできないので、お戻しできるよう、汚れも磨いて、保管しておきます。長年、お疲れ様でした。

ジャックスプリング全交換

修理に入ります。
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ウイッペンやジャックのセンターピンの状態もチェックしていくのですが、ウイッペンをはずすと、かびていたり、スプーンも錆びつつあるので、

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きれいにしていきます。

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ジャックの汚れは頑固でして、頑張ってきれいにしないと!

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ジャックスプリングもきれいに取り除いて、ジャックも、きれいになりました◎

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一つ一つウイッペンを外して、クリーニングして、ジャックスプリングを交換して、ジャックスプリングの交換が終わりました。
あれだけ真っ黒だったということは、それだけたくさん弾いてこられたのだろうな、と思って、このピアノが元のあの場所にもどってお客様が弾くとき、きっといろんなことを思って、ドキドキするとおもうんです。その期待を裏切らない作業をしなくては、と改めて身が引き締まりました。

ダンパー関係 (ダンパーレバークロス貼替、ダンパーフェルト貼替)

まずは、ダンパーロッドを磨きます。

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低音がソステヌートつきのピアノなので、ダンパーロッドは2本あります。

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ダンパーレバークロスも、消耗がすすんでいるので、貼替えます。

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古いクロスを取り除いて、

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新しいものを貼付けます。いつものクロスより長いので、寸足らずにならないように裁断します。

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ダンパーフェルトも貼り替えるので、ダンパーウッドを取り外して、ダンパーレバーを取り付けました!
久し振りにピアノの中をみたら、眩くて、早く音をだしたいけど、まだまだですね。
まずはダンパーの作業を美しく仕上げられるよう、頑張ります!

工房では、今治市・ヤマハYUAのダンパー関係の修理を行いました。

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古いフェルトを剥がします。3点セットみたいになりました。
きれいにすることは、きれいに貼るための絶対条件で、ライニングフェルトから貼り換えないと、きれいなダンパーフェルトの貼替は難しいと思います。
今回のは、ささくれやすくて、かなり悪戦苦闘しました。
いい時は、ぺろーんと剥がれて、そっからさらに残った接着剤をきれいにしていくのですが、はみ出た膠が頑固に居座って、ぺろーんとなりにくくて、イライラしながら、でも、イライラすると、たいていダメなので、段階を踏んでみたり、アプローチの仕方を変えたりしながら、何とか剥がし終えました。

あと、BL71の調律をしたり、C3Bの調律をしたり、久しぶりにがっつり調律しました。
BL71は、昨日もやったので、だいぶ落ち着いていました。
C3Bが、古いハンマーのままですが、時折ハッとする響きで、ハンマー交換したら、どうなるんだろう♪と、今から楽しみです。

ダンパーフェルトのライニングフェルトの貼り付けを行います。
まずは、低音から。
苦手なほうから先に作業しがちの性格です。。
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みどりのフェルトも裁断して、元と同じものを作成します。
みどりのやつ、左右の裁断は、フェルトもしっかりしているので、幅も決まりやすく、まっすぐ直角に裁断しやすいのですが、上下にあたる面が、地味に斜めになりやすくて、ドツボにはまると、同じようにずっと斜めに裁断されてしまうので、まっすぐ切れるよう、気を遣います。
ライニングフェルトも、同じやり方なのに、高音より、低音のほうが細いからか、まだまだ難しいです。

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中音以降のライニングフェルトも貼り付けます。
ダンパーウッドと同じ幅で、しかもフェルトそのものも直角に、さらに、上から見た時にライニングフェルトの厚みの見え方も揃えて、と、ただ貼り付けるだけでなく、大雑把な私が、細かなことを気にして、美しさを追求中です。
ライニングフェルトの見え方は、同じフェルトで張っても、何かの具合で同じ厚みに見えないことがあって、それができるようになると、もっとさらにきれいになるので、毎回、まだまだやり方を模索中です。

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ダンパーフェルトを裁断しました。
平ダンパーの数がギリギリのギリギリで、あと3㎝長いといいのに。。と思うけど、そんななので、一つたりとも失敗できず、感覚を変えないよう、一気に一台分裁断しました。

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『ステッチ入りの方が難しいです、とか言ったけど、ステッチ入りもナシも、どっちも難しいわっ!』と、若干自分自身に喝を入れながら、今日も裁断の難しさを実感して、でも、極めたい作業です。

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低音も貼り付け終りました。
貼り付けるのも、上から見た時、ピシッとそろって見えるために、かなり気を遣って貼り付けていきます。

ダンパーの取り付けを行いました。
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高音から取り付けていって、

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中音、WとVのダンパーのあたりは、ほんとにセンスが問われます。
流れと、合わせるべきものと、止音と。ほんとに難しいです…。

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低音も取り付け終りました。
もちろん、どの音も、止音はばっちりです!

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全て取り付けた後、なんだか高音が気になって、再度見なおしました。
うーん、裁断も、合わせるもの、難しいです。
ヤマハの方が合わせやすい面もあれば、カワイの方がいい面もあったりで、今日も気づきがありました。
本体に合わせないと見えてこないこともあって、しかも、やり方も、やってくうちに自ずと今のやり方になったけど、果たしてこの方法で正しいのか、より正確に合わせる方法はないのか、いろいろ考えながらです。
ダンパーの貼替自体、手もかかって、難易度の高い作業ですが、必要なので、『面倒だからやらない』と、私は言えないので、それなら誰が見てもきれいな仕事ができるよう、状態に言い訳なく合わせられるよう、進んでいかなくてはなりません。
こう文字で見るとなんだか苦しみながらやっているようですが、苦悩はしていますが、考えることがすっごくたまらなく楽しくて、私は仕事が大好きです!

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一台終わって、腰も目も、酷使しまして、今日も使い果たしました。

ハンマー修理 (バットの加工、バットスプリング全交換、フレンジコード貼り付け、ブライドルテープ全交換)

そして、一昨日、Piano Refinishの柴田さんが、依頼させて頂いていた今治市・ヤマハYUAのハンマーバットの加工の作業を行って仕上げて下さり、加工を終えたものが、手元に届きました!

『ヤマハのオリジナルとほぼ同じ形状、同じ角度で削ったから、もとからそうだったかのようになってるよ』、と、おっしゃっていらしたのですが、

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ほんとに、全く同じでした!
(左:ヤマハの通常のもの(U1H)、右:加工してくださったもの(YUA))
全部均一で、幅とかも同じで、バリもなく、美しいです!きれいすぎて、撫でてしまうくらい、きれいです!

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バットスプリングコードを通す穴も、試しに一本やってみたら、いつも修理しているのと変わらない感じで、すごいです。
お忙しい中、専用の治具もない所から、いろいろ考えて下さり、本当に頼もしく、こんなにも美しく仕上げてくださり、ありがとうございました!
この完璧な加工にふさわしい修理とハンマー交換をしなくてはなりせん。頑張ります!

加工していただいて戻ってきたハンマーです。

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何度見ても精巧に加工されていて、元々そうだったかのようです。

バットスプリングを取り付けます。
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ほんとに全く違和感ないきつさでした!

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ブライドルテープも、貼り換えて、一般的なハンマーバットになりました。
元のYUAと、タッチ感は変わってしまうけど、その分今までの不具合は解消されます。
どちらがいいとかではなく、しなくては成立しなくなったので、相談の上で作業させていただいて、それならば、加工してよかった、と心から思って頂けるよう、この先の作業でしっかり結果を出していきたいです。

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元々ないので、フレンジコードも貼り付けました。

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修理前は、全交換かなと思っていたのですが、とりあえず5本くらい交換無しでチェックしたら、機能回復して、最適な動きになっていたので、今まで何度もセンターピン交換していることもあるので、必要なもののみセンターピン交換をすることにしました。
あれだけスティックだらけで、ハンマーが静止位置に戻らなかったのに、フレンジが軽くうごいて、ストレスなく動くようになりました。
ハンマーの動きに関しての問題は解決したと思います!
きっとこれまでの、『弾いても、連打できない』というピアノが、ppもffもしっかり鳴るピアノになると思います。

この変化で、バットスプリングの効果を感じて、一般的なアクション修理の時も、年数が経ったピアノで劣化が感じられるものは、交換してきましたが、機能的な面での必要性を改めて感じました。
修理する者が、その修理に対して、『なぜ必要か』を理解して修理することは、お客様に必要性を説明するに必要なことです。
修理する者がその修理の効果や意味を分かってないのに、ただ『必要だから』と言われても、お客様も納得できないし、修理そのものも、正しくできないと思います。
どの修理も、修理後の変化を感じて、お客様が『よくなった』、『してよかった』と感じてくださることが第一です。そのために、正しい状態を知ることと、修理する意味を、ブレずに持っていたいです。

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ハンマーレールクロスを交換して、レール類をとりつけました。

ハンマー交換

お正月の間に着々と今治市・ヤマハYUAのハンマー交換の準備も行っていたのですが、10日にクリーニングと修理のピアノが搬入されてくるので、その前に落ち着いて作業したくて、今日、やっと作業できました。

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ハンマーフェルトの消耗はもちろんですが、接着がはがれているものも多数あって、これではよくないので、ハンマー交換します。

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使用するのは、ドイツ製のハンマーです。どんな音がするのか、楽しみです。

早朝からノンストップで作業して、ハンマー交換が終わりました。
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高音から。
打弦点に気を付けて、弦をまっすぐとらえて、パーンと鳴りますように。

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次高音は、美しいメロディーが奏でられますように。

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中音は、流れるように植えたいです。

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低音は、隣と当たらないように。しっかり高音を支えられる音になっているといいのですが。

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打弦点も真っすぐで、90度で打つように植わっていて、ホッとしました。
今の自分でできる精一杯です。元ついていたより、きれいに植わったと思います。
まだ見えてないものがあるのかもしれないですが、2本、どうしてもあっていないものを修正して、少し間隔を手直しました。捻じれなどはなく、走りも大丈夫でした!
作業前や途中だけで、肝心の作業結果は、作業の結果の分からないような斜めからの画じゃなく、核心部分を真正面からの画を載せるのは、とても勇気のいることですが、お客様がみて、恥ずかしくない美しい仕事を心掛けていて、お客様が、『きれいになって、いい音しそう』って想ってくださるといいのですが。

道具の配置や手順など、滞りなく作業するために、しっかり考えて作業しましたが、無事にハンマー交換が終わって、今日はとても集中しましたし、ホッとしました。

今回は、今までとは違う、師匠に教わった方法でハンマー交換を行いました。
個人的に、ハンマー交換も、グランドよりアップライトの方が難易度が高いと思っています。
年々、お持ちのピアノを修理して使っていかれるお客様が増えて、その場合、年数が経っていることや、愛着があってコンスタントにお弾きになっていて消耗が激しかったりして、ハンマー交換が必要な場合が増えてきているのですが、ハンマー交換は、音色に直結する作業で、修理する側も身構える、技術を必要とする作業です。

今回、師匠から受け継いだ方法は、シンプルですが、ほんとに理に適っていて、今までのハンマー交換の作業への身構える感じが無くなるような、見るポイントを絞れて、かなり楽に作業できる方法です。
『ハンマー交換へのハードルを少し下げれて、作業時間や作業そのものが楽になれば、お客様への負担も減らせるから』、という想いから、長年試行錯誤されて、この方法を確立されたようで、実際作業して、今までよりも作業者側の負担も軽くなり、しかも精度も格段に上がって、私でさえも、お客様の負担を減らすことができる、と感じました。

確立されるために、見えていなかったり、感じさせないだけで、どれだけの苦悩や積み重ねがあったのか、想像しきれなくて、ご自身が苦労されてきたから、私には『しなくてもいい苦労はしなくていい』と、会得されたもののすべてを包み隠さず教えてくださって、それは普通考えられないことで、本当は私ももっと苦労をしなくてはならないのに、私などがこのようにようやく到達されたことを教わっていいのだろうか、と、申し訳なく想って手放しに軽く思ってはならない気持ちと、飛び越えて高い技術を得ることで、お客様のピアノをもっとよくできるので、それが嬉しかったり、教わる側にも、いろんな想いがあるものです。

作業をしながら、あまりにもやりやすくて、この方法を確立されるまでの道のりと、それを伝えたお気持ちを想うと、ぐっとくるものがあり、しかもその前に私が躓くであろうポイントにも予めご助言くださっていて、作業してて意味が分かったのと、おそらくご自身も工夫されたところだったのだろうから、それこそ私が困らないように、という想いからだと思うので、相当ありがたいご助言で、やはり師匠のことは誰よりも尊敬します。

ウイッペンを持ち上げて音を鳴らすと、高音は水を打ったような音で、中音、次高音は甘く、低音は、しっかり支えられるような音で、『大丈夫だ』と思うと、心底ホッとして泣けてきて、お客様が決心して修理をお任せくださった想いに、きっと応えられる音だと思います。
そして、技術を伝えた想いには、正しい結果をだしてお客様に喜んで頂くことでしか応えられなくて、少しでも師匠の作業に近づけるよう、この先は、私自身との戦いです。

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一晩経っても、走りとか捻じれとか発生していなかったので、これで安定しそうで、ブライドルテープを取り付けました。

鍵盤関係の修理はこれからですが、一度調律します。

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やっと、やっと、念願の調律です!
修理して一番気になるのは、弾き心地や音色がどうであるかで、気になって気になって、早く調律したくて、調律師とは、そういうものだと思います。作業の結果を知るには、調律がするのが一番わかりやすいとおもいます。
さすがに3回くらいやりましたが、回を重ねると、どんどんはっきりしてきて、ピアノが起きたというか、この瞬間は震えるほど心地よくて、昨日なんとなく大丈夫と思ったけど、正しく植わったからか、整音もしてないのに、ppでもはっきり発音して、指に感じるハンマーや弦の弾力が心地よくて、そう、とにかく心地よい感じでした。
いままで、調律するにも、ハンマーがスティックしていたのに、ストレスなく弾けて、また音色も、雑味がなく調律もしやすくて、これから精度を上げて整調していくと、さらに良くなるので、きっと喜んでくださると思います!

鍵盤関係 (キーバックレールクロス貼替、バランス・フロントパンチングクロス全交換、小口貼替、バランス・フロントブッシングクロス貼替)

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くたびれたクロス達は、新しくします。

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キーピンもきれいにして、古いキーバックレールクロスと、バランス・フロントパンチングクロスを取り除きました。

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クロスを新しくしました。
なんだか修理の終わりが見えてきて、少し寂しくなったけど、長くお預かりしているのに、何もいわず、楽しみに待ってくださるお客様のもとにお戻しできるまで、心をこめて作業します

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小口は変色しているので、交換します。

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剥がせるか微妙な年式でしたが、のみでできるタイプでした。

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バランスもフロントも、ブッシングをきれいに取り除きました。

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鍵盤のサイドの汚れは、きれいにしたいということですので、

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こちらもきれいに汚れを落としました。

朝、調律にお伺いする前に、今治市・ヤマハYUAの小口は貼り付けていたので、
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加工しました。きれいに交換できました!

工房では、今治市・ヤマハYUAのブッシングクロスを貼りました。
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バランスも、

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フロントも、きっときれいに貼れていると思います。

ブッシングの接着が乾きました。
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きれいにピシッと貼れました。

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黒ラックをぬったり、黒鍵も白鍵も、バフをかけてきれいにしました。

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キャプスタンボタンも案外汚れているので、きれいにして、

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鍵盤が仕上がりました!

仕上げ

さっとファイリングして、早速、整調を行いました。
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まず鍵盤の高さや深さなど、一通り粗整調します。
毎回きちっと合わせていたのですが、さすがにバットも加工したし、バックレールクロスも交換したし、少し気がかりだったのですが、大きなおかしなところもなく、安心しました。
調律をして、今度は、精度を出して、再度調律します。

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毎回当たり前のことですが、しっかり整調すると、なんだか一層音も合わせやすくなって、伸び方や豊かさが増して、しかも打鍵したように音が出るので、お客様が弾くときも、コントロールしやすいと思います!
ピアノを弾くのがお好きで、生涯楽しまれるために修理を決断してくださった御客様です。
『音がきれいな~♪弾きやすくなった』と、喜んでくださるといいのですが、なんせ私も調律したくなる音とタッチなので、外装を磨いて、出荷できるまで、できるかぎり調律と整調を行っていきたいと思います!

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再度調律と軽く整音して、今治市・ヤマハYUAが完成しました。

年々不具合が目立ってきて、弾ける限りはピアノを弾くために、バットの加工を含む、かなり大がかりな修理となりました。
優しくて、明るく前向きなお客様が、搬出の時に涙され、それを見た時、絶対に心配なく、長く弾き続けられるピアノにする!と、心に誓って作業をさせて頂きました。
都度都度思いだしたのは、ピアノのことを話されるお客様の活き活きとしたお顔や、優しい笑顔で、悩んだ場面もあったけど、やっと、完成させることができました。
温かくも、芯のしっかりした音は、どことなく、お客様そものものような気がして、すんなり受け入れて下さるといいな。
このピアノだと、これまでの想い出と一緒に、これからは新しいことにもチャレンジしていけそうな、弾くのが楽しい、うれしい、そんなピアノに仕上がっています。
納品は二月ですから、それまで、できる限り、調律と整調を繰り返していきます!

もう一度鍵盤を上げて、掃除を行います

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猫さんがいても、何年も気が付かなかったくらい、お部屋の掃除をきれいにされていたので、一層掃除にも余念がありません!

もう何回、調律したか…整調も見直して、最後、心をこめて調律しました。DSC_5523

お客様は、一切せかすことなく、全部お任せで、ずっと楽しみにまっていてくださったのですが、私は調律師で、どんな工程を踏んで、今、修理的にどの段階で、あとどのくらいで仕上がるかとか、何となくわかるけど、お客様はわからないことがほとんどだろうから、その状態でなにも言わずに待っていてくださることは、よほどに信頼してくださっていたのだと思いました。そう思うと、お客様の喜んでくださる仕事ができていれば、お客様のお気持ちに応えられるし、仕上がったピアノの音やタッチから、きっと喜んでくださると思っています。

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元など、よく見直して、全体もチェックして、今治市・ヤマハYUAの作業が完了しました!大人のお方で、今もレッスンされていて、3月に発表会あるようにお聞きしていたので、何とか間に合わせたかったので、間に合いそうで、ここのところ雨が続いているので、金曜日、晴れますように!

納品の日

午後から、今治市・ヤマハYUAの納品でした。
見事に晴れました!
先に貸し出していたピアノを引き上げてからの搬入です。
『先輩(貸し出していたピアノは、年式が古く、お客様が先輩と呼んでいらした)にはお世話になって、助かりました。』と、最後、ご自身できれいに拭き上げてくださっていたようで、そんなお方の役にたてて、貸し出しピアノも、まだまだ現役で、大切に扱ってくださり、ありがとうございました。

いつも丁寧に、だけど手早く作業してくださり、あっという間にお客様のお家からピアノが搬出されて、工房からお客様のお宅へピアノの搬入を。

今か今かと待ちわびて、ピアノが設置される様子をずっと見ていらっしゃいました。
設置されると、運送会社のお方が確認で音を出した時から、『高音が!きれいな〜♪うんうん♡』と、ピアノが戻ってきたのがうれしくて仕方なくて、早く弾きたいのが隣にいて、よくわかりました。

そのご様子が、飾ることなく、心から嬉しそうで、そういうお姿を見れたことが、一番うれしかったです。

運送会社の方々に丁寧にごあいさつされて、お見送りをして、お客様、ほんとに待ちわびていたようで、ピアノを大きく抱きしめるようにされて、自分の大切な人たちのようにピアノを迎え入れて、そうやって大切にされるピアノって、ほんとに幸せなピアノです。
早く早く弾きたそうで、早速、練習を重ねていらっしゃる発表会の曲を弾いてくださり、『高音がほんときれい、キラッキラしとる◎』と、おっしゃってくださいました。

そして、ブログもご覧くださっていたので、今日きてお話に出てきたことを説明するのに、一旦、ピアノを開けました。
『ピカピカや~、めっちゃきれいな♡』と、お話しながら、『ちょい、ばぁば、よんでかまん?』と、お母様を呼んでこられて、お母様も『買ったときみたいや、治してもらってありがとうございました。』と、初めてピアノが来たときや、このピアノにされた想いを想いだされて、グッときていらっしゃるような感じで、それを見たお客様もそのご様子にグッと来ていらして、それを見た私もグッとくるという、うれしい気持ちの溢れる空間でした。
お客様は、もちろん、不具合を治したり、生涯弾きつづけるためにピアノを治されることにされたのですが、治ったピアノをお母さまにお見せして、『これからもお母さんが買ってくれたピアノで、ずっとピアノを弾いていくからね、ありがとう』というお気持ちが大きかったのかな、と、想いました。

お母様のお気持ち、娘さんのお気持ち、各々のお立場で、ピアノを大切に想ってくださっているのが感じられ、そのようなピアノに関わらせて頂けたことが、心底うれしかったです。

最近よく思うのが、修理を依頼いただいたり、ピアノを弾くお客様ご本人に喜んで頂くのはもちろんですが、そのご家族様にも喜んで頂けることは、ピアノがそのお家にとって、お家の一部として大切な存在で、皆様でピアノを受け入れてくださることで、ほんとにうれしく想います。
皆様にとって大切な存在を、生涯一緒に歩んで、繋いでいけるようお手伝いさせていただけて、私は幸せです。

3月の末の発表会には、お母様も聴きにいらっしゃるようで、いくつになっても、お母様はドキドキするだろうし、でも、大人になっても弾き続ける娘さんのことを誇らしく想うと思います。

今回のピアノは、バットの加工があって、ピアノリフィニッシュの柴田さんに精巧で純正部品と同じように加工していただけて、これまでの不具合は、無くなると思います。
そして、お客様にお褒め頂いた高音は、今回、密かに自信があったというか、師匠に教えて頂いたハンマー交換の方法で、見た目だけでなく、ピシッと理想的な打弦点で弦をとらえている感があって、鳴り方が素晴らしかったので、お客様と感じることが同じだったことがうれしかったですし、こうして喜んで頂くるよう大切な技術を伝えて下さり、様々なご助言を頂き、お二人に、心から感謝申し上げます。お忙しい中、いろいろとありがとうございました。

年々不具合が増えていく中で、バットの加工という、今までとタッチ感が変わったり、張弦やハンマー交換という、大きな修理をご決断下さり、信じて待っていてくださり、また、運送会社の方々へも含めて、たくさんのお気遣いを頂き、本当にありがとうございました。

この先、何があっても、お客様のピアノに、全責任をもっていきますので、今後とも、よろしくお願いいたします!

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