今治市・エテルナE35Mの作業まとめ

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2年ほど前、ご紹介で初めてお伺いさせていただいたのですが、あまりにもボン線とジンが多くて、そして弦や底板の感じが、何でそうなのか予想がつかない感じでした。

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その前の年にお家に来たピアノで、その時の調律師さんは、何も言わず、掃除もせず帰っていったそうなので、ピアノの状態をお伝えするのも迷ったのですが、あまりにも顕著で、心苦しくも、ピアノの状態をお伝えさせて頂きました。
去年の1月の調律の時は、これ以上何度もお伝えすると、せっかくお子さんのために探されたピアノなのに、悲しくさせてしまうだけだと思って、それ以上は何も言わず、いつも通りの作業をしてお暇させていただいていたのですが、秋口に、『みんなピアノを習うことになったので、長く使うから、ピアノを治したい』と、ご連絡頂きました。

改めてお伺いさせていただいて、ピアノを前に、いろいろな角度からこのピアノを治すことについて、いろいろとお話させていただきました。
純粋にいい部分もお伝えしましたし、言いにくいこともあったし、立派な階段のあるお屋敷で、ピアノを出すだけでも、ご負担は一層大きかったり、大きく治すのと、新たに比較的新しい中古を探されるのと、変わらないくらいかかる可能性もあったので、選択をされるのはお客様で、私はフラットな立場で、お客様にとって一番納得して、よい選択がなされるよう、かたよりの無いよう、いろいろなパターンと、ピアノのことをお伝えしました。

元々ご主人様のご実家ではエテルナを使用されていて、あえてエテルナを探されたことや、探して手にされたこのピアノを、いい部品を使って、お子さん方に使ってほしいという親としての想いがあったようで、それならば、ということで、オーバーホールさせて頂くこととなりました。

きっと決断するまで、お子さんたちのことを想って、たくさん悩まれたことと思います。
だからこそ、再度お話させて頂いたとき、いろいろ聞いても、『このエテルナを治すこと』に対して、全く揺らぐことなく、お気持ちをお聞かせくださり、お客様も覚悟をもって修理を決断されたのだと思います。
お客様にとって、ピアノを治すことは本当に大きな決断で、簡単な気持ちで決められたわけがないので、その想いを受け止めて、かわいい三姉妹と、大きな想いで決断された親御さんのために、精一杯作業させて頂きます!

外装クリーニング

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最初に運び入れられた時の運送会社さんが掃除されたのか、比較的きれいな方です。

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しっかり掃除しました。

外装を磨いていきます。

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結構くすんでいて、磨く前、塗料の劣化だと困るな…と思ったのですが、

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磨くときれいになっていくので、大丈夫そうです!

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腕木も、

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艶が戻りました!

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一通り本体を磨いて、ピアノを寝かせて、さらに磨いて、張弦のために、棚板や前土台、脚などを取り除きました。
チューニングピンの高さやプレッシャーバーの高さなども測定して、今日の作業は終了しました。

これから張弦やハンマー交換、アクション修理を行って、長く使えるピアノにしていきます!

磨きを進めます。

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一瞬、エンブレムは、きれいにならないかも…と思いましたが、

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何とか輝きを取り戻して、小さなお子さん方が、ピカピカになった♪とおもってくださるといいな。

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お子さん方がたくさん開け閉めしたと思われる鍵盤蓋も、

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艶が出ました!
蝶番は磨けなかったけど、少しずつ、作業を進めなくては。

今治市・エテルナE35Mは、外装の残りと張弦の準備を行いました。

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お伺いの時、掃除もペダル磨きもしていますが、もっと本格的に、きれいにします!

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すべて分解して、ホコリを一掃して、ペダルも磨きました。
ピカピカのペダルは、見ていて気持ちがいいです◎

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きれいになるか、ちょっと不安だった部分も、

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何とかきれいになって、あと、長丁番や、拍子木、脚など、パーツも磨いて外装のクリーニングは、一通り終わりました。

張弦

張弦に向けて作業を進めます。

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巻線の弦の錆び?がなんなのか…そもそも巻線の方は、錆なのかもわからなくて。
そのせいなのかもわからないけれど、お客様も明白に感じられるほどの雑音と、全く響かない音が混在して、ちょっと音楽を奏でられる音ではなくなってしまっています。
マウスガードが付いているので、ネズちゃん関係ではないのだろうけど、芯線の一部の錆び方も、粉をふくレベルで、改めて、調律した時、断線しなかって、よかったです。
弦を張り変えて、ちゃんとした音のピアノに戻していきます。

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張力を緩めて、

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巻線を外します。おそらくデータはないかもしれないので、送れるように、順番に取り外します。

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芯線部分も取り外しました。

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最後、張弦前にしっかり掃除しますが、一旦、さっと掃除しただけで結構きれいになりました。
駒にシミとかなくて、ホコリもサラサラで、だからなおのこと、弦の原因が気になるのですが、考えても仕方ないので、作業をすすめます。

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チューニングピンを外していきます。
機械的なのを使ったら早いのだろうけど、大昔やった時、力のあるお方ならいいのかもしれないけど、私がやると力で負けてブレてダメなのと、抜いたチューニングピンが、かなりの高温で、直感的に『いかん』と思ったというか、いろいろダメージ強そうで、一人で作業するようになってからは、人力です。ラチェットハンマーが大活躍です。

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全てのチューニングピンを取り除きました。
ブッシュはこのままで、あとはフレームフェルトを貼り換えたり、細かい所をきれいにして、張弦できるようにします。

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鉄骨そのものをきれいにしたり、響板やこまもきれいにして、フレームフェルトを貼りかえます。

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弦を張った時に、フェルトがよれるとかっこ悪いので、しっかり貼り付けます。

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ヒッチピンやアッパーブリッジなども磨いています。
巻線を、昨日の夕方発送しようと思って運送屋さんに持っていったら、その時は、『雪の影響で今日は荷受けできなくて、お預かりしておいて、解除され次第順次の発送で構いませんか?』といわれたので、『よろしくお願いいたします』と、預けておいたのですが、今日の夕方、浜松の若社長さんから連絡があって、もう浜松についたようです。今日は届かないと思っていたので、無事についてよかったです。
巻線が届き次第、早めに張弦したいです。

今日は、今治市・エテルナE35Mの芯線部分の張弦を行いました。

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修理の際、お客様と、使う部品のことや、やること、今回は見合わせること、しっかりと相談して決めました。
チューニングピンはドイツ製のものを使用します。

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準備はできていたので、張弦していきます。

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芯線部分を張り終えました。
このまま巻線を張ると、時間的に途中になりそうだったので、今日は芯線部分のみ張りました。
明日、巻線部分を張ります。
どんなふうに張れたか、まだ全く分かりませんが、いろいろ気を付けて作業しました!

芯線部分を、全体を大体仕上げて、さらに細かく仕上げていきました。
時間が足りず、次高音と中音は、もう少し頑張って合わせます。

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高音を仕上げました。
目線がリセットすると、また見え方も変わると思います。
まだ仕上げの作業は続くので、より細かく気が付けるよう、そして気がついたら、自分の目指すきれいだと思う仕事に、少しでも近づけるよう、もっとつめて合わせたいです。

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次高音と、

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中音、

両方、もう少し合わせたいです。

今日はこれ以上は合わせらない、と、ピアノと今の自分の技術の最大と言い切れないので、もう一度見直してから、ピアノを立てようと思います。

完璧に張ること、合わせることがいかに難しく、すごいことか、やればやるほど、実感します。

そして、画でみると、実物の時に気が付かなかったことに気がついて、画は動かない証拠で、恥ずかしい仕事ができないし、画で見て完璧なのは、完璧でしかないので、そういうだれが見ても美しい仕事、自分が追い求める仕事は1つなので、諦めずに仕上げます。

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もう一度見直して、一旦ピアノを起こして、また、見直して、棚板を取り付けて、寝かせます。

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前土台や底板などを取り付けて、

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ピアノを起こしました。

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高音、

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次高音、

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中音、

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低音

と、全体を仕上げました。

張るたびに、もっと、と思うのですが、仕上たいように張れているというより、張ったものをきれいに見えるように頑張って仕上げている感じで、この違いが、仕上がりに出るように思います。
こう張りたいと思うものは、実物もみて、しっかり目に焼き付いて、そう張れるよう、頭にはしっかりあるのに、実際やるとまだまだ遠くて、やればやるほど、張りたいように、流れるように弦を張っていくことが、いかに技術と経験が必要か、毎回ほんとにすごいことだと思い知ります。
貴重な技術を教えて下さったときから、自分が目で見た本物の完璧な仕事ができるようになる、と固く決めているので、追い求める道はまだまだ続きます。

やっとピアノは起きて、調律をしたら、アクションの修理となります。ハンマー交換もあるので、完成までは、もう少しかかりそうです。

ピアノを起こしたので、

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ちょっと虫食いや、

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つかれた感じのパンチングを、

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キーピンを磨いてから、新しくしました。

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ピシッとした印象に変わってきました!

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調律もしました。
あの弦の謎のものが原因だったのか、元々の巻き方なのか分かりませんが、貼り換えるに至った原因のジン線やボン線は一切なくなって、雑音なく、ピアノの音になりました!

アクション解体

今治市・エテルナE35Mの作業を行いました。

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アクションの解体を行います。

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最初のお伺いの時から、パッと見きれいなのですが、ちょっと難アリで、センターピンがかなりの本数、抜けてきていました。
右に抜けてくるものもあれば、左に抜けてくるものもある様子です。

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かと思えば、スティックしているものもあったりして、センターピンは全交換します。

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昔、70本ほど、フレンジコードの交換がされたようで、きれいに取り除いていなかったり、溝に入ってなかったり、交換してなかったものが破断したり、こちらも交換していきます。
ちょっと、このままにしているのが、受け入れがたいです。

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ダンパーは、謎のなにかが染みてるので、貼り替えます。
これはなんだったのか、やっぱりわからないけど、かわいらしい三姉妹が使うので、こんな汚れたダンパーだと、悲しいです。

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ハンマーは、低音終わりから中音にかけて、パンクがちで、ウッドこそ違いますが、YUAと同じ感じの剥がれてき方でした。
弦はU3Hと同じ仕様だったようなのですが、次にやるUXも同じ感じでパンクしてきていて、そのあたりのピアノは注意してみておかないといけないのかな。と思いました。
なので、ハンマー交換も行ないます。

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あとはダンパーレバークロス、バットスプリング、ブライドルテープを交換予定です。

修理も折り返しになって、年始にお引き取りしたのに、まだ仕上げられてないのが心苦しいのですが、しっかり治して、かわいい3姉妹と、子どもさん想いのご両親のために、長く心配なく使っていただけるよう、がんばります

ジャックスプリング全交換

その後、ピアノの点検にお伺いさせて頂いてから、工房で今治市・エテルナ35Mの作業を行いました。

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バットがかなりガタだったので、ウイッペンやジャックも確認しながら、ジャックスプリングを交換します。

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ジャックスプリングを取り除いて、ジャックをきれいにしてます。
今回はかなりやりやすくて、きれいになりやすくて、サクサク作業がすすみました。

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スプーンも磨きます。

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新しいジャックスプリングを取り付けました。
個人的に、新しいスプリングのピカピカな感じが好きです。

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間隔なども見直して、ジャックスプリングの交換が終わりました。

ダンパー関係の修理 (ダンパーレバークロス貼替、ダンパーフェルト貼替)


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一か所、なぜか特に消耗してて、気になったので確認すると、37Aでした。特にピッチがとりにくいわけではありませんが、何となく納得です。

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古いクロスを取り除きます。ヤマハの作業が久しぶりな気がします。

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裁断して貼りつけました。ぴったり貼り付けできました◎
ちょっと、作業がすすまなくて、明日もあんまりかもです。。
出来れば週明けまでにはダンパーの貼りかえと本体合わせまでやっておきたいのですが、頑張ります!

今治市・エテルナE35Mの作業も進めます。

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ダンパーレバーを取り付けます。

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ダンパーフェルトを剥がします。
見るからにがっちりたっぷり接着されていたので、ものすっごい時間がかかって、今日はやっとのこと、高音と中音セクションのところを剥がしました。
時間がかかっても、頑張ります!

昨日の続きで、低音のダンパーの剥がしからです。
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古いものをきれいに剥がします。
こちらも剥がしにくくて、でも、強引に事を進めると、いいことは全くないので、ひたすらコツコツきれいにしました。

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剥がしたダンパーヘッドに、ライニングフェルトを貼り付けました。

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同じ幅で、同じ厚みになるように貼るのが難しくて、かなり慎重に貼り付けます。
時間があっというまに過ぎてしまいます。

裁断までやりたかったけど、ピアノを引き取りに来てくださる時間も近かったので、裁断は断念しました。途中でおいていける作業と、流れで一気にしたい作業があって、ダンパーは、流れにのって作業したいです。

今日は今治市・エテルナE35Mのダンパーの作業を行いました。

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ダンパーフェルトを裁断して、

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きれいに貼りつけました。
裁断も、貼り付けも、かなり気を使って、でも、まだまだ作業は続きます。

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本体に合わせて取り付けていきます。

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凝視するので、目が乾いてしまって。。
ちょっと大変でしたが、止音もしっかりできて、ダンパーが新しくなると、新しくなった感が増しますね◎

ハンマー関係の修理 (ブライドルテープ全交換、バットスプリング全交換、フレンジコード貼替、バットセンターピン全交換)

ハンマー交換をする前に、必要な修理を進めていきます。

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バットスプリングとブライドルテープを交換します。

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バットスプリングを取り付けます。
いつもやってると、縫物みたいだな、と思います。
スプリングが折れ曲がっていたものもあったりして、バットスプリングは、ちゃんと役割にある部品ですから、新しいスプリングが、しっかりがんばってくれると思います!

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ブライドルテープも貼り付けました。謎のシミもなくなって、さっぱりしました◎

いろいろと用事をつつ、今治市・エテルナE35Mのフレンジコードを剥がして、貼り付けました。

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結構前の古いコードが残っていたして、せっかく張り替えるので、きれいに取り除いて、

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溝にきっちりと貼り付けます。
まばらだったのとか、ちゃんと溝にはまってなかったのが、ものすごく気になってたので、同じものになって、よかったです。

工房では、今治市・エテルナの作業を行いました。
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こんな感じで、センターピンの抜けてきているものがたくさんあって、全て交換します。

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ハンマーに取り付けて、動きはばっちりです◎

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エテルナのセンターピンの交換が終わりました。

ハンマー交換

ハンマー交換に向けて、オリジナルの角度などを測定しました。

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結構な本数、パンクしています。
調律に行くまえと、戻ってから、しっかり確認しながら測定して、記録しておきました。

前回気が付いたことなど、覚えているうちにまた作業できることは、ものすごく恵まれていて、たまたまそうなったのですが、愛媛に戻って調律師として仕事を再開して、年々、やれることが増えてきました。
師匠との出会いが一番大きかったのですが、数年前の最初の頃、『一気になんでもできるようにはならないから、すぐに大きな修理はないだろうけど、いつか張弦やハンマー交換をするときのために、日々の仕事の精度を磨くように』と、焦る私にご助言くださったときのことを想い出しました。
あの頃は、やりたくてもいろんな兼ね合いでできなかったり、機会もなくて、焦るばかりでしたが、やれることを続けて、今、あの頃では想像もできなかったような毎日を過ごしています。

身近な修理の一つ一つ、いつか張弦やハンマー交換をするときのために、と、精度を積み重ねてきて、やっと教わったことを、ご助言いただきながら一人でやるようになり、一歩一歩の積み重ねで今があり、でも、師匠のような完璧な仕事にはまだまだ遠いので、より正しく植えられるよう、心身の調子を整えて、集中して作業していきます。

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本体に合わせて、一度ハンマーを取り付けを行いました。
まだまだ準備が整ってないので、植えるのはまだ先です。
植えることももちろんですが、それまでの一つ一つ、準備にもものすごく時間がかかります。

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ドイツ製のハンマーを使用します。どんな音になるのでしょうか、楽しみです♪

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印をつけたら、

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集中して、気を付けて、穴あけを行いました。
治具をセットして、いろいろ準備して穴あけするのですが、いよいよ始めた一本目は、手が震えました。
よし!と思って穴あけして始めて、一本目、全く狙ったとおりじゃなかったら…。
想像するだけで恐ろしいです。。そんなプレッシャーも、やっていくからには、自分で背負わなけらばなりません。
なんとか無事に一台、穴あけが終りました。

誰もいなくて、一人でやっていると、お昼を食べるのも忘れていました。

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高音から、

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低音まで、

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ハンマー交換が終わりました。
あ最後、時間がきて急ぎすぎて、次高音と中音の画像がピンボケで、そんななので、まだアクションを外して直線の出方や、裏から見ても正しいかとか、見れてなくて。。。
最高音の音の出方というか、全く音出しする余裕もなく、帰らなくてはならない時間があって、交換することに全力だった一日でした。
完全に乾いて、あまり変化がないといいのですが。

前回気が付いたことを気を付けて、そこがさらによくなると、そしたら今度は、より見えてくるものがあって、ハンマー交換にかかる時は、他を後回しにして集中して、大変で責任も重いけど、治したいピアノにハンマー交換が必要なのなら、避けて通れません。
治したピアノの音が素敵で、音が好きだと言ってくださるよう、修理させていただいて、結果を実感していただくためは、より正しく、美しくハンマーを植えられるようにならなくてはなりません。

師匠に教わった方法のおかげで、するべき苦労の時間を、より精度をつきつめるために使うことができ、正しい仕事を目に焼き付けて、音も聴いて、やれなかった時期以上に得た技術と時間は、あまりにも貴重で、調律師として仕事をしていくうえで、大きな力となることで、毎回、感謝の気持ちと、自分が見えることが増える分、師匠のされる仕事の完璧さのすごさを感じます。
今回もまた、気が付くことがあったので、さらに正しく仕事できるよう、頑張ります!

小口貼替、鍵盤クリーニング

今回の小口は、剥がれないタイプで、Piano Refinishの柴田さんに依頼させて頂いていた鍵盤が、作業を終えて戻ってきました!

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奥が、四国中央市から移動・ヤマハW110BD、手前が、今治市・エテルナE35Mの鍵盤です。
背の高さが20センチくらい違うで、鍵盤の長さとか、ポストワイヤーの長さとか、結構違いますね。
小さな工房ですから、同時進行はあまりできなくて、こんなふうに鍵盤が並ぶのは、最初で最後かもしれません。

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二台とも小口が変色していて、(↑は、ヤマハW110BDの小口です。)ヤマハの小口は、製造された時期によって、こんな風に変色したり、反ったりしてしまうものがあります。。
交換するのに、古い小口をのみで簡単に取り除けるものもあれば、今回のように、小口が簡単に剥がれず、粉々になって、なかなか剥がせないものがあって、今回は二台ともダメだったので、お力をお借りいたしました。

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木部が傷つくことなく、きれいに剥がしていただいて、お忙しい中、快くお引き受け下さり、本当にありがとうございます。
鍵盤の小口部分はとても目立つ部分で、クリーニングや中古のピアノを販売するとき、反ったりしていなくても、変色は目に付きますから、できればきれいにしたい部分です。
ですが、はがれにくいタイプだと、まず取り除くこと自体が難しく、時間はかかるし、きれいに剥がしきれなかったり、なかなか剥がれず勢いで木部をえぐったり、鍵盤の上面を誤ってかけさせてしまったり、と、かなり大変な作業で、作業自体を躊躇してしまいます。
このように、柴田さんにきれいに剥がしていただけるから、剥がれない小口の貼替のご依頼を躊躇なくお引き受けさせて頂けて、私は、作業の意味合いが大きく、お客様も目に見えてきれいになる部分で、喜ばれる作業で、ほんとに作業していただけることを心強く思っています。
『送料も掛かるから…』と、良心的すぎて、毎回、良心的すぎることと、本当にご多忙で、作業していただくこと自体がご負担となってしまうだろうから、依頼させて頂くのも気が引けてしまうのに、『これからも気軽に頼んでください』と、お気遣いいただいて、いつも本当にありがとうございます。
今後とも、よろしくお願いいたします。

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ほんとにきれいに剥がして頂いて、ありがとうございます。
当たり前ですが、貼り付け面がきれいじゃないと、ぴったりきれいに貼れません。
剥がれないタイプは、剥がれないだけに、うっすら取り除けなかったりするので、こんなにきれいだと、きれいに貼れるので、とても嬉しいです。

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まずは貼り付けて、

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加工しました。
きっと三姉妹ちゃんたち、びっくりするはずです♪
女の子は、幼くても、かわいいもの、きれいなものが大好きだと思うので、いままで鍵盤蓋をあけると、小口が茶色でちょっと気になっていただろうから、これからは真っ白で、練習するのも楽しくなるといいな◎

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ブッシングは、ほとんど消耗もなく、虫食いもないので、この先、三姉妹ちゃんとお父様が弾いて、消耗した段階、必要な時に修理することになっています。

鍵盤を仕上げました。

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各処理をして、黒鍵は磨いて黒ラックを塗って、白鍵も磨いて、ポストワイヤーやキャプスタンも磨いて、鍵盤のクリーニングが終わりました。

これで修理関係の殆どが終って、工房での作業も、あとはマフラーくらいで、やっと音出しができます!

仕上げ

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鍵盤を入れて、粗整調をして、調律を行いました。
1か月ぶりの調律でどうなってるか、と思ったら、大きなピッチ低下もなくて、びっくりしました。。
昔、新品が組みあがって、最初の音律を作る調律(いた工場では、第一調律と呼んでいました。)のあと、第二、第三…と、短いスパンで何度も何度もかなり高めのピッチに設定して調律されていくのに、出荷前の最終調律でも、最初の基準をとると、たいてい上げなくてはならない感じで、そういうイメージだったのですが、昨日のC3Bも、今朝のYUAも、ピッチ低下なく、きっと教わった張弦方法がピアノにとってよいからなのかもしれません。
これだとお客様のお家へ入れても、大きく崩れなさそうです。
ハンマー交換をして初めての調律ですが、巻線部もやっぱりジン線もボン線もなくて、心底ほっとして、まだなにも本格的なことはしていないのに、豊かに鳴って、いろんなことが想われて、ちょっと泣きそうでした。
これから調律、整調、整音を重ねていきます。

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ファイリングをしたり、

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整調して、調律して、整音して、を何度も繰り返しました。
最初からしっかり鳴っていて、揃えるのに時間をかけました。
繰り返すたびに音がまとまって、調律がやりやすくなる感じもして、たくさん調律をしたくなります。

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外装のチェックをしながら、組み立てて、完成しました!

長くお待たせしてしまって、実はいつも、このピアノのことが気がかりでした。
お言葉に甘えて、集中できるときに作業していたら、思った以上に時間がかかってしまって…。
昨日、音の鳴り方やタッチ感で、『娘たちのために、できるだけいいものを使ってあげたい』というお父様のお気持ちを裏切らないピアノとなると確信して、今日も作業して、作業を重ねる度の変化が、ピアノは裏切らないんだな、と想ったりして、出荷まで、外装を取り付けた状態で音を整えたりして、さらに整調、調律をできる限り行います。

出荷に向けて、

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一度、鍵盤をあげて、掃除し直して、

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調律と整調を見直します。
何度も調律や整調していても、納品後になにかあってはけないので、最後の最後まで、やっぱり気が抜けないものですね。
お父様も三姉妹ちゃんたちも、皆さん喜んでくださるといいな。

納品されて

とにかく搬入が大変で、無事に元のところへ収まって、ホッとしました。

恥ずかしがり屋のお子さんたちで、搬入中はお隣のお部屋で待っていらしたのですが、一瞬車に戻ると、その間にピアノを弾きにきて、「ピアノ、お掃除してもらってピカピカやね」と、きれいになったピアノを喜んでくださっているようで、お母さんの陰に隠れてたけど、すぐにピアノを弾きにきていてくださってこと自体が、とても嬉しかったです。
そして、小口のことも「ここが(小口)がきれいになっとる!!」と、真っ先に気がついてくれて、やっぱり女の子ですら、気になってたよね。あんなに喜んでくれて、やってよかったです。

奥様も、お子さん方の様子が嬉しいご様子で、にこにことお話くださるのが、すごく嬉しかったです。
親御様がお子さんのためを想って修理を決断されて、親御様にとったら、正しいピアノを子供さんたちが嬉しそうに弾くのが、何よりも嬉しいはずなので、お子さん方のうれしそうなご様子が、親御様にとったら、修理して良かったと、思うものだと思うので、お気持ちに少しでもお応えできたと想います。

お子さん方のために、と、すごく考えられたうえで、必要なことを相談させていただきながら、長くかかって、途中、ご連絡させて頂いたときも、「全然大丈夫ですので」と、信じてお任せくださり、ありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします!

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