今治市・ヤマハU1Gの作業まとめ

いきさつ


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二年前にピアノをご実家から移動されてお伺いさせて頂いたのですが、虫食いがあったりして、状況をお伝えさせて頂きました。
もう移動後だったことやいろいろあって、その時は調律や掃除をしっかりさせて頂いて、翌年も現状のまま調律させて頂いたのですが、昨年の年末、調律のご案内をさせて頂いたとき、ピアノの先生とも相談されていたようで、修理をしたい、ということとなって、お待たせしてしまっていたのですが、やっと作業開始となりました。

アクションを解体していきます。

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ブライドルテープを外すと、劣化したチップがポロポロ取れてしまいます。

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ダンパーレバークロスも虫食いで、

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ダンパーフェルトも、しっかり食べられてしまっています。。

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ハンマーも虫食いです。
音も固く、以前フレンジコードの交換がされていたようですが、弦合わせが行われていなかったようで、溝のつき方もガタガタで、音がまばらになってしまっています。
一番に中をしっかり修理されたい、ということで、ハンマー交換を行うことになっています。

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虫や、そのほか、アクションの状態をチェックできました!

鍵盤のブッシングやパンチング、キーバックレールクロスなども交換予定です。
外装は劣化がすすんでしまって、お客様も気がかりなところではあるのですが、それよりも中の方を心配なくしたい、ということで、とにかく虫食いをなくして、正しいタッチで、きれいな音に戻すことを第一に作業していきます。
頑張ってピアノを続けていらして、習い始めて3年目で、誰もが知っている曲を弾くようになって、お母様も、そんなお子さんのために悩んで修理をご決断くださったようです。
弾いていらっしゃるのは、高学年になった男の子で、アクションなどを引き取りに行ったとき、興味津々で見ていらして、あの男の子が『弾きやすくなった!いい音になった!』と感じて下さり、お母様にも『やってよかった!』と想って頂けるよう、しっかり作業していきます!

アクション修理 (ジャックスプリング全交換)

早速、ジャックスプリングの交換を行います。


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ウイッペンを外して、

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きれいにして、ジャックスプリングを取り除きます。根元で折れるポイントがあるタイプのようで、すんごい慎重にしないと、折れてしまいます。。折れた方が大変なので、慎重に。。

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新しいスプリングを取り付けます。

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並べると、結構汚れていたのが分かります。きれいになって気持ちがいいですね。

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Gの卵もあったけど、

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さっと取り除いて、磨いたダンパーロッドを取り付けました。スプーンも一つ一つ磨いています♪

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ジャックスプリングの交換が終わりました◎

ダンパー関係 (ダンパーレバークロス貼替、ダンパーフェルト貼替)

ダンパー関係の修理に入ります。

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ダンパーレバークロスは、虫食いやすり減ったりしているので、交換します。

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まずは古いクロスを剥がして、

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新しいものを裁断して、貼り付けました。

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ダンパーレバーを取り付けました。
これから、ダンパーフェルトの交換が待っています。

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けっこう横が虫食いで、解体しないとわからなかった部分です。
音も止まっているし、機能的には問題ないのかもしれません。
ダンパーフェルトの貼替が大変なのは身をもってわかっていますが、このままにしておくことはできないので、頑張って貼り換えます。

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低音も、

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中音から上も、すっかり取り除きました。

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ダンパーブロックもきれいにしました。ちょっとやりにくいです。
剥がすだけでも大仕事ですが、ここからまた裁断して貼り付けるのも大変です。
修理した方が汚い仕事になったら恥ずかしいので、きれいな貼替を目指します!


昨日剥がし終えたので、まずはライニングフェルトを貼りつけます。

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低音も、

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中音から上も、貼り付けました。
ライニングフェルトも同じように裁断してきれいに貼るのはほんとに難しくて、だからといっダンパーフェルトだけ貼り換えるわけにもいかないので、確実に裁断できるよう、ちょっとづついろいろ試していて、それがまた楽しかったりします。

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ダンパーフェルトの裁断も終わりました。

もっときれいにと思って、研修の時の動画を見直して研究したり、なかなか治具が定まらず、でも、あきらめたくないので、ちょっと時間がかかってしまいました。軽くお昼をこえていました。。

フェルトを貼り付けます。

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きちんと貼らないと止音不良にもつながりますし、貼るのも気をつかいます。

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まだまだ、前に気になったところがよくなると、またもう一歩先が見えてくるのですが、直線が出ると、裁断面の触り心地も違って、裁断している時の音も違うようです。

かなり慎重に作業を進めて、やっとダンパーフェルトの貼替が終りました。
後日、お客様のお家にお伺いさせて頂いて、本体に合わせて取り付けます。
きれいに取り付いて、お客様が喜んでくださるといいな。

ハンマー関係 (バットスプリング全交換・ブライドルテープ全交換、バットフェルト全交換、フレンジコード全交換)

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まず、古いバットスプリングとブライドルテープをを取り除きます。

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やっぱりバットフェルトも虫食いの模様なので、

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きれいに取り除きました。

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ついでに、ハンマーに記されていたなぞの印(おそらくフレンジコードの修理のとき、何かの目印で?)も、

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きれいにできる限り、消しました。

バットフェルトを貼り付けます。

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なんだかとっても手間取ってしまいました。
どんなにやっても斜めになって、泣きたくなりました。
見えても見えなくても、斜めは斜めで、それはポリシーに反するので、ちゃんときれない原因を探って、無事にまっすぐ直角になりました。やっぱり裁断は難しいです。

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バットスプリングを取り付けて、

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ブライドルテープを貼り付けます。

フレンジコードは交換されていましたが、

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貼り付けが甘かったり、溝に入ってなかったり、コードがバサバサで、長さもまちまちなので、ついでに貼替えます。

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コードを取り除いて、

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貼り付けました。

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フレンジを取り付けて、ハンマー交換以外のハンマー関係の修理は終わりました。

ハンマー交換の準備とダンパーの取り付けなど

ハンマーの穴あけの準備もしました。

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もとのハンマーの角度を測るにも、線を引くにも、印をつけるにも、それが頼りとなるので、ピリピリします。
穴を開けるにも、ボール盤のセットが決まり切らず、開けられませんでした。試行錯誤中です。

セットもできて、穴あけを行いました。

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集中力を集中させて作業しました。

ハンマー交換以外の修理は終わっているので、先ずお客様のお家でダンパーを取り付けてから、本体をもう一度時間をかけて掃除して、ハンマー交換となります。


ダンパーをお客様のお家で取り付けにお伺いさせて頂きました。

前の日からとても緊張するので、お伺いしてすぐ、ご実家のお母さまもブログをご覧になってくださって、修理の様子を見守ってくださっているようで、お子さんたちも興味を持ってくださっていることを教えて下さって、うれしかったです。

ダンパーを取り付ける前に、ペダル関係の作業をしておきます。


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ペダル窓のフェルトやクロスも虫食いなので、交換します。
お客様も、『あらゆるところのフェルトをたべるんやね~』とびっくりされていました。
虫食いのピアノは、結構窓フェルトやクロスも食われがちです。。

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ペダル窓フェルトとクロス、スライドスキンを交換して、ペダルも磨いて取り付けました。

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足回りもきれいになったので、ダンパーを取り付けていきます。

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高音から取り付けていって、

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低音も取り付けて、

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おそらく止音も大丈夫そうです!

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レール類を取り付けて、

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一旦ハンマーを取り付けました。
予想以上に走りや捻じれが多かったので、持ち帰って一度しっかり見て、再度本体とあっているか確認することにしました。
ざっとやったけど、ちょっと今のままだと厳しいです。

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工房で走りや捻じれ、間隔は見ていったので、本体に合わせて微調整しました。


筬関係 (バランス・フロントパンチングクロス全交換)

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パンチング関係も虫食いです。。

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キーピンを磨いて、クタクタだったキーバックレールクロスと虫食いのバランス・フロントパンチングクロスを交換しました。

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こちらはマフラーを本体に取り付ける軸のところのフェルトです。
こちらも交換しました。
交換個所の多さにお客様も驚かれていて、アクションを含めて、まんべんなく被害があったように思います。

久し振りにお客様のお家でダンパーの取り付けなど修理の作業をして、前日から作業を組み立てて、作業しながらも、毎回学ぶところがあります。

ハンマー交換

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高音から、

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中音、

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低音と、交換が終わりました。接着剤も乾きたてですが、そんなに動かないといいのですが。

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虫食いなハンマーレールクロスも、

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新しく貼り換えて、すっきりしました。

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本体がないので、角度とか、位置とか、どうなっているのか、気がかりですが、きちんと植わってて、いい音になっているといいな♪

鍵盤ブッシングクロス交換

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消耗してたり、

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虫食いもあったりするので、貼り替えます。

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バランスと、

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フロントのブッシングを取り除きました。地味にホール内とかに虫ハウスが詰まっていたりして、さすがにちょっとうわっ…て思ったりするけど、これがお客様の家のピアノにあるそのままある思うと、その方が大変なので、きちんと取り除いて、きれいにします。

今日は、バランスだけ貼り付けました。

フロントのブッシングを貼り付けました。

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切り口とか、穴に入る深さとか、左右位置とか、気にすることはたくさんで、身近な修理ですが、きれいに仕上げるのには、たくさん気を遣います。
きれいに貼れているといいな♪

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虫食いがあるマフラーも、

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新しく貼り換えました。
新しくして、気持ちがいいです。

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ブッシングは、かっちり貼れていて、

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黒鍵は結構汚れているので、

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黒鍵にバフをかけたり、

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黒ラックを塗ったり、きれいにしたりして、黒鍵を仕上げました。

白鍵を磨いて、いろいろきれいにして、
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鍵盤が仕上がりました!

修理のお届け

本体の無い状態でのハンマー交換で、相当なプレッシャーでした。

お伺いして、アクションを見たお母様が、『きれいになっとる~』といってくださって、でも、『ありがとうございます!また仕上がったらお声掛けいたしますので~』といっぱいいっぱいのスタートでした。

とにかくアクションの状態を確認したくて、角度や位置を確認して、大きくおかしなところもなかったですが、捻じれや間隔は少し見直さなくてはならなくて、本体がない難しさを感じながら、それでもでてくる音がまるで違って、でも、この段階でも、まだ、いっぱいいっぱいのままでした。

整調も、ほとんど新しくしたので覚悟していったのですが、これまでのお伺いで、虫食いがあるなりに、整調していたからか、そこまで大変ではなく、粗整調→調律で、ほとんど落ち着きましたが、もう一度、本整調、調律で仕上げていきます。

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不思議と一番落ち着いていたのが低音でした。隣と当たるところもなく、走りもなく。

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中音は、弾くとお腹に響いてくるようなしっかりとした響きになって、

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高音は、捻じれや間隔を少し修正して、カラッと明るくキラキラした音になりました。
3オクターブとかで弾くと、音の厚みが今までとまるで違って、外装をつけてもそれが衰えないのにびっくりしました。
ものすごく調律しやすくなってて、若々しくなった印象です。
もう50年近くなるピアノで、でも、修理の意味を改めて感じさせられ、とても勉強になりました。

作業後お母様に確認していただくと、『音が全然違う!若くなった!』と仰ってくださったので、同じ印象ですね。『ほんときれなって~』と、ピアノに近づいて、しみじみ仰ってくださったのが印象的でした。
喜んでくださる様子に、やっとホッとしました。

お子さんが戻られる前にお暇させて頂いたので、お子さんの様子が気がかりだったのですが、丁寧にご連絡くださり、
息子さんが帰宅されて、『ピアノが治ったよ』と伝えると、急いで弾いて『ピアノの先生の家で弾くのと同じ音になった!同じ音だから練習もしやすくなった!』と喜んで弾いて、双子のお兄ちゃんも『いい音やね!一曲弾いて~』という楽しそうなやり取りがあったようで、ほんとに嬉しかったです。ちょっと泣きました。

実はダンパーの取り付けにお伺いした時、息子さんは『調律師さんがくるなら』と、お茶のお気遣いの際、かわいいピアノのカップを用意してくれていて、そんな優しい息子さんなので、絶対に喜んでいただきたかったのです。

高学年の男の子がピアノを弾くにあたって、修理を決断されることは、とても悩まれたことだということは十分すぎるくらいわかっていて、だからこそ、小学生の男の子や、ピアノから離れて長いお母様にもわかる結果を残す責任があったので、無事に作業をおえて、喜んでくださって、心から嬉しいです。

作業中も、いろいろとお気遣い下さり、また、過分なお気遣いに恐縮するばかりで、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いいたします!

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