西条市へ移動・カワイUS8Xの作業まとめ

いきさつ

朝も雨は降っていたのですが、お昼には止み、搬出するときには晴れ間も見えて、ピアノの門出にぴったりでした。夜にはまた雨が降り出して、そんなことからも、きっと運のよいお方なのかもしれません。
搬出は、ピアノを立てたりして、結構難易度が高かったのですが、運送屋さんがものすごく慎重に作業してくださり、傷をつけることなく、無事に搬出されました。

そのまま工房へ。

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カワイUS8Xです。
低音・中音にアグラフが使用され、譜面台の後ろに、『トーンスプレッダー』(ヤマハでいう、トーンエスケープメント)が採用されている、グランドピアノを意識した、高級機種です。

作業は先ですが、裏は先に掃除します。

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思ったよりもホコリもすくなくて、大きな傷もなく、ご自身が使用されていたころ、お母様(おばあ様)から、手を洗って弾くように言われたり、できる範囲でホコリを常に払われてきたようで、大切に扱われてきたピアノです。

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さっぱりきれいになりました!

アクションや、虫食い修理などあるものの、本来なら工房を経由しなくてもよいレベルの比較的きれいなピアノですが、

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お客様からの最初のお問い合わせが、『ペダルのところから液漏れしていて、このような状態でも修理は可能でしょうか?』ということで、『液漏れってなんだろう?』と思ったのですが、点検にお伺いして、状態を見て、確かに液漏れでした。
長くいれていたものが破裂して、ピアノの外まで流れ出てしまっていて、こちらの処置をするのに、現場での対応が難しかったりしたので、工房へ運ぶこととなりました。
どうしていくかは、解体してからの判断となります。

ご依頼いただく前、何度も修理できるところを探して、なかなか『ここだ!』というところに行きつかず、しまなみpianoにたどりついたとき、何かをかんじてお問い合わせ頂いたようです。

お見積りするのも、実際解体してみないと、どのパーツがダメなのか、底板も使えるのかはっきりせず、パーツの手配などもどうなるか、不透明で、かなりアバウトなことしかお伝え出来ませんでした。簡単に方向性を判断して、決めていける事例ではなくて、今、はっきりしたことはお伝え出来ないことお伝えすると、それも了承してくださり、判断の付いた段階で相談させて頂きながら作業させていただくことを受け入れてくださり、修理のご依頼を頂きました。

当時、家族の皆様でいいピアノを、ということで、展示されていた中でもダントツの高級機種で、『治して』使いたかったから、しまなみpianoにたどり着いたのだと思います。
このピアノは、西条では、お客様の娘さんが使用されるようで、電子ピアノでは限界となってしまって、治して使えるのなら…、と、思われ、たどり着いて、不透明ななか、信じて任せて下さり、ありがとうございます。

最初からとても丁寧に対応くださり、きっとピアノのことも、真剣に治せるところを探されたのだとおもうので、ペダルはもちろん、アクションや虫食いもしっかり治して、安心して使えるピアノになるよう、精一杯作業させて頂きます!

底板の作成、ペダルの取り付け

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木工職人のお方に来ていただいて底板の状態を見ていただきました。
まずは、外す前の状態も見ておきたいとおっしゃっていたので、ピアノを寝かせて、外すところから。

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こんな感じでした。
破裂したやつ、取り除こうとしても、ベタベタに広がる一方で、しかも、長くベタベタに晒された部分は、ブヨブヨしてきていました。
職人さんも、私も、いろんな意味で新しく作成したほうがよい、という見解で、お客様にお伝えしたところ、『写真をみたときからとりかえないといけないな、と思っていたので、よろしくお願いいたします。』と、すぐに返事を頂き、ご理解頂き、ありがとうございます。

ペダルを取り付けている金具は、錆びてボロボロになっているので、新しく交換予定です。

早速ペダルなどは取り外し、板だけの状態にして、持ち帰って頂きました。

『現物の木材となるべくおなじような木で、形状もできうる限り再現しますね!』と、初めての試みなのに、とても頼りになります。

本業でいくつもの現場をかかえているのに、すごく前向きに取り組んでくださり、職人さんは今でもギターなど弾いていらっしゃるようで、だから最初からとても親身になってくださったのかもしれません。
お客様のピアノの響板を見て、『贅沢に良い木材でつくられていますね』と、おっしゃっていて、分野は別でも、木のプロのお方がよいという木材って、お客様も驚いて、喜ばれると思ってお伝えしたら、とても喜んでいらして、まだ何も作業はしていないけど、このピアノは、愛されるピアノな気がします。

そして、注文していた、西条市に移動・カワイUS8Xのペダルの取り付け金具(ペダルメタルブッシュ)が届きました。

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取り寄せて頂いたものがぴったり合うようで、無事だったペダルを仮につけたり、穴の高さなどみても大丈夫そうで、ペダルははそのまま使えそうです。
少しでも負担が軽く、そしてペダルは元のものと現行機種では、若干見た目も違うので、そのまま使えてよかったです。
手配も大変だったようで、浜松の若社長さんのおかげで入手できて、本当にありがとうございました!

先日、取り付けには来ていただいていたのですが、作成中の画像も撮って送っていてくださっていて、ブログにも載せてることも快諾してくださっていたので、少しだけご紹介させていただきます。

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一枚の板から、

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元あった底板と全く同じ厚みで、

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傾斜も同じように加工して、取り付けの穴もあけて下さっていました。

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きれいに整えて、工房に持ってきてくださいました。

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一度仮で取り付けて、穴の位置が寸分たがわず、ぴたっと底板がピアノに取り付くと、その時やっと、木工職人さんから笑顔がこぼれました。
元の底板をお持ち帰りしていたとはいえ、20か所近くある穴を、全て元も位置で穴あけするというのは、すごい技術です。簡単なことではないですし、現物の無い修理の本体合わせのプレッシャーは、少しはわかるので、とてもホッとされたのが伝わってきました。

とてもきさくで明るく、お話の尽きないお方ですが、ピアノに合わせる、となった時、すべてのビスがつくまでは、残り数本となっても、決して安気な言葉は漏らされず、表情も目線もピリッとしていて、そういうのは、どの分野でも変わらないのだな、と思いました。

誰の紹介でもなく、初めてご相談の問い合わせをさせて頂いたときから、とても前向きに、そして楽しそうに仕事をして下さり、このように専門外の初めてのことでも、真剣にお客様のために作業してくださるお方に作業していただけて、ほんとに良かったと思いますし、今後も何かあったら、なんでもご相談ください、と仰ってくださり、心強いです。
ご多忙な中、依頼を引き受けて下さり、ありがとうございました!

この先は、バトンタッチで、私の作業です。

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ビスの頭が埋まる?穴を開けます。

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こんな感じにします。もちろん新しくしたビスも、ばっちり、がっちり、無理なく取り付けられています。

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一旦底板を取り外して、ペダルのみ、取り付けました。
後はピアノを起こして、天秤棒など、取り付けます。

カワイ・US8Xのお客様は、このペダル関係のことが気がかりで、探してたどり着いてくださった御方です。
こんなに完璧に底板を造ってくださったので、私もきっちり、ペダルを取りつけなくてはならないです。頑張ります!

ペダルの取付にかかります。

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確認のために、アクションが必要なので、ハンマーレールクロスを交換しました。

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ダンパーの調整がまだなので、アクションにハンマーレールを取り付けて、ピアノを起こして、アクションを本体におさめて、準備万端です。

カワイですし、ペダル位置がおかしかったりしたわけではないので、元々ついていた場所に取り付けたので大丈夫ですが、失敗できないので、何度も何度も確認して、取り付けました。

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突上棒も、

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動かしても棚板にあたったりしません。ダンパーのほうも大丈夫です!

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ちゃんと問題なく、取り付けられました。
ペダルや底板は、ペダルを踏むと圧がかかって、ちゃんとしっかりとビスで止まってなかったり、他にもなにか問題があると、雑音がしたりするのですが、雑音もなく、大丈夫です!
ペダルがペダル窓に当たってこすれたりすることも、もちろんありません。

お客様が一番不安に思われていた部分なので、きちんと動いいて、問題なく取り付いて、心底、ホッとしました。
大丈夫だ、と、確信があってビス止めしていくけど、『失敗したら、埋木してまたあければいいや』的ものではないので、まず1つ目をとめるにも、勇気が必要で、大げさですが、意を決して、作業していくので、ものすごく緊張しました。
全く問題なく取り付きましたので、ご安心くださいね◎

外装

今日は、パーツを磨きます。
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鍵盤蓋は、汚れやすいですよね。

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エンブレムも、ピカピカになりました◎

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框は、ほこっていますが、

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実際はそんなでもないというか、傷もないし、すぐにきれいになりました!

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カバーをかけていらした感がある上前です。

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トーンスプレッダー(ヤマハでいうトーンエスケープメント)は、こんな感じです。
磨いてホコリも吹き飛ばして、クリアな音が聴こえそうな気がします

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ピカピカの鏡面仕上げになりました♪
ホコリが積もっていたとはいえ、時間さえあれば現場できれいにできそうなきれいさで、底板のことがなければ、そのまま運べたピアノだと思ってて、折角工房に入れたのならば、お客様のお家ではできないレベルできれいに磨き上げて、喜んで頂きたいです。

西条市へ移動・カワイUS8Xの本体を磨きました。
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まずは屋根から。
いつの間にか、いつも上から順に足元にむかって磨くようになりました。
そうじゃなくても全然磨けるのですが、ルーティン的な?
しっくりくるというか、家の掃除するとき、上から下に、奥から手前にって教わったので、そのなごりですかね。

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パーツを磨いたとき、すぐにバフをかけても、きれいになりにくかったので、段階を踏んで、きれいにしました!

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腕木も、

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積もったホコリたちも、

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艶が戻って、きれいになりました。頑固そうでしたが、さっときれいになってくれました◎

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足もとも、

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黒色に戻りました!
本体を立てたまま磨けるところは、磨き終わりました!

続いて、金属部分を磨きます。

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錆びててきれいになるか不安でしたが、

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どこだったかわからなくなりました!

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ペダルは、分解するまで現物を使えるか分からなかったのですが、無事で、現物を使えます。

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ピカピカに磨きました◎
金属磨きは、特にカワイは大変ですが、やっぱり金属部分はピカピカでないと!

本体内部のクリーニングも行います。

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立てたまま、きれいにできるところをきれいにしていきます。

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全体のホコリや鉄骨のシミなど、できる限りきれいにしました。

ピアノを寝かせておいたので、クリーニングの続きも行います。

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響板や、駒の上などは、やっぱり寝かせた方が断然やりやすいし、きれいにしやすいです。
傷をつけないよう、慎重に。。

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前土台も、取り付けたままだと、すみっこがきれいにならないので、外してきれいにします。

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磨いて、フェルトも新しく貼替ました◎
足もとは、汚れやすく、一見、かげになって目立ちにくいようですが、特にすみっこは、黒いピアノの場合、白くなっていると、汚く見えるので、気を付けてみるようにしています。

アクション修理の前に

アクションの状態をチェックしました。

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点検の段階から、かなりスティックが多くて、調律するのも難しそうで。。
センターピンの交換は必須なのですが、この状態だと、キャッチャースキンとバットスキンの交換が必要か判断できないので、数本、センターピンを交換して、大体の寸法を出して、判断します。
見た目にはまだ大丈夫そうに見えるし、お引き取りの段階では、リバウンドはありませんでしたが、この動きの悪さでは、正しく判断できません。
お客様にも、お引き取り後の判断となることはお伝えしていたのですが、お客様からしたら、どうなるか早く知っておきたいことだと思うので、早くやりたかったことの一つです。
レットオフが異様に広かったり、深さもかなりおかしかったので、いかんやろな、と思ったのですが、鍵盤関係の寸法などを出してもダメなので、交換した方がよさそうで、お客様のもお伝えして、キャッチャースキンとバットスキンも交換することになりました。アクションを解体します。

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かなりスティックがひどくて、全部こんな感じでした。
移動先のお家は、大丈夫そうなので、センターピンの交換をします。
バットのセンターピンがこれだけ動きが悪いと、ウイッペンとジャックも怪しいので、作業しつつ判断していこうと思います。

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バットフェルトも虫食いです。
キャッチャー、バットスキンも変えるので、虫食いでなくても交換予定でしたが、バットフェルトが虫食いなので、バットアンダーフェルト(スキンの下に貼ってある、赤いフェルト)と、バットアンダークロス(スキンの内側に貼ってある白いクロス)に虫食いがないか、よく見ながら作業を進めたいと思います!

ウイッペン関係の修理 (ウイッペン・ジャックセンターピン全交換、ジャックスプリング全交換)

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ウイッペンは、アクションに付けてる時からもったりした動きで、外してみると、ガチガチでものすごく動きが悪くて、そして、ジャックもなんだか動きがイマイチで…。。
両方センターピンを交換することにしました。

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古いスプリングを外して、ジャックとウイッペンフレンジも取り外します。
ブッシングを打ち抜かないように気を付けて作業します。

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ジャックを外すと、ジャックのブッシングクロスがはみ出ていて、こびりついてるかんじ?で、ジャックに干渉して動きが悪かったのかも?

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分からないけど、作業したもののほとんどがこんなで、ジャックの動きが悪い原因かもしれなくて、何となくそのままにしておくとよくない気がするので、面一にしておきました。

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スプーンも磨いて、

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ジャックとウイッペンのセンターピンを交換して、ジャックスプリングを取り付けます。

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今日は低音セクションのみとなりました。

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やっとこさ、88、全部終わりました。
センターピンの交換もですが、パーツそのもののクリーニングも、結構根気がいります。
ホコリや汚れは取り除かないと、せっかく分解してきれいにできるよい機会ですから、きれいにしたいです。

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ダンパーロットもピカピカに磨きました。

きれいになって、そしてなにより、もっさりしてたのが普通に動くようになりました!
きっといままでおじいちゃんの家に来たときにピアノを弾くと、鍵盤がゆ~っくり戻ったりしたと思うので、きっとこれで大丈夫です!

ダンパーレバークロス貼替

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古いクロスを取り除きます。
全く同じようにみえても、接着剤が違うのか、取り除きやすさが、年式のよって様々です。
取り除きにくくても、取れやすくても、きれいに取り除かなくてはならないことには変わりがないので、根気よく作業します。
ちなみに、今治市・カワイOP32よりは、気持ち、取れやすかったです。といっても、ほんと、コツコツです。

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パーツそのものもきれいにして、裁断した新しいクロスを貼り付けました!
幅の決まりもよく、ぴたっと貼りつけられました◎

ダンパーの取り付けから。
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後は、ペダルが取り付いたら、本体に合わせて調整します。

ハンマー関係の修理 (キャッチャー・バットスキン全交換、バットフェルト全交換、バットスプリング全交換、ブライドルテープ全交換、フレンジコード貼替、バットセンターピン全交換)

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ハンマーは全部スティックしていますから、センターピンの交換と、調整を出してダメだったので、バットとキャッチャースキン、バットフェルトを交換します。
あと、バットスプリングと、ブライドルテープも。

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このように、元あったバットスキン、キャッチャースキン、バットフェルトをきれいに剥がします。
ぱっと見いけそうだったけど、調整を出すと、元々極端に調整されていたようで、ちゃんと調整すると、リバウンドしてしまいました。
ピアノの点検のときにお客様に、調整を出してだめだったら、スキンの交換もありうることをお伝えしていて、動画を送って確認いただき、スキン交換もさせていただくことになりました。

よく観察すると、スキンがUSとかでリバウンドしてる時になってる感じになってきてて、もう少し経つと、顕著になったのかもしれません。
そんなにたくさん修理をやってないけど、製造年で、リバウンドしてることには変わりないけど、スキンの変化の仕方とか、違う気がします。

時間もかかるし、剥がす時に一発できれいになる感じではないので、根気が必要ですが、根本的に治す必要がある時は、ご相談して修理をさせていただいたほうが、ピアノにとっては良いと思っています。

レッドオフをすごく広くしていたり、深さやバックチェックなどを極端に調整していたりして、それだとタッチも悪いし、お客様も気が付かれるほどの不具合を、根本から治さないと、本来のピアノの良さは、発揮できないと思います。

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半分もできなかったけど、そのくらい時間と手間がかかることで、きちんときれいに剥がしたうえで貼らないとダメなので、今日はここまでとなりました。


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すんごい頑張って、全てのキャッチャースキンとバットスキン、バットフェルトを剥がしました!
キャッチャースキンの裁断も終わっているので、後日、貼り付けていきます。

裁断していたキャッチャースキンの貼り付けから。
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皮目の向きと、空気が入らないように、注意して貼り付けます。
目に入りやすい部分でもあるので、幅ぴったりに裁断して、面一に貼り付けるのが難しくて、毎回気を使います。。

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バットスキンも裁断して、貼り付けます。
少しづつ、見慣れた感じに近づいています!

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バットフェルトも裁断して、貼り付けました。
ダンパーフェルトほど厚みはありませんが、フェルトが柔らかく、幅を同じにして、直線に裁断するのが難しいです。
正方形ではないけれど、大きさや直線が出ていないと、粗が目立つフェルトです。

フェルトやスキンは、きれいに仕上げるには、工業製品みたいに裁断しなくてはならなくて、ほんとに難しくて、バットフェルトキャッチャースキンも、自分的に、裁断が難しいランキングの上位です。だからといって、汚い作業は恥ずかしいので、元々の交換前と同じように見えるよう毎回すごく気を使って作業しています。

なかなか思うより、ちょっとペースが遅いけど、修理の終わりが見えてきました。
元々、こだわりの感じられる機種なので、修理が終って音出しするのが楽しみで、もう少しです。
楽しみに待っていてくださるお客様のために、頑張ります!

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バットスプリングを新しくします。
あれだけスティックが多かったので、そういう時はやっぱり、機能が落ちていくのも、早いのでしょうかね?
何となく、古いスプリングに、お疲れ様です、と言いたくなるくらい、スティックが多いピアノで、頑張ってくれていたスプリングに代わって、これからは新しくなったスプリングに活躍してもらいます。

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ブライドルテープも新しくします。
カビてたり、シミになってしまったり、せっかく新しいお家に行くので、きれいな方が気持ちいいはずです。

後はセンターピン交換!と行きたいところでしたが、

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元々のフレンジコードがちょっと残念で、長さがバラバラで、心なしか長めなものや、溝にもキチンと入って無いものが多くて、そのままでもいいのかもしれないけど、違和感を感じて、どうしても引っかかるので、貼り換えることにしました。

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適切な長さに切って、すべて交換しました。
手早くやらないとダメなので、ちょっと大変でした。
でも、なんか、違和感がなくなって、この方がしっくりきます。

バットセンターを交換します。
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ウイッペンのフレンジの時のように、フレンジのブッシングがはみ出ているものを、面一にしながら、

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センターピンを交換します。
デリケートというか、スティックしやすいのに、ほんとにちょっとの差でガタになりやすい気がします。ハンマーがスティックせず、ガタでないことは、絶対条件なので、基本の基本の修理で、大切な修理です。一本一本、真剣に取り組みます。

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88本、すべてのセンターピンの交換が終わりました。

鍵盤関係の修理 (バランス・フロントパンチングクロス全交換、バランス・フロントブッシングクロス貼替、キーバックレールクロス貼替)

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フロントパンチングの上に、虫食いのブッシングの粉があって、セットして、キーピンもピカピカに磨いていきます。

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フロントパンチングクロスが、グランドピアノ仕様だったので、ドイツ製のものにしました!

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キーピンも磨いて、キーバックレールとバランス・フロントパンチングクロスを交換しました。

キーピンの磨きは、筬が黒くならないようにに気を付けないと、のちのち汚いのは、悲しいです。。
キーピン自体が錆びてたり、ベタベタしていると、ほかをどんなにきちっとしても、鍵盤の動きを阻害してしまいます。単純で、地味でも、このような基礎的なところも作業の意味があると思います。
ここまで磨いたので、きっと鍵盤も俊敏に動くと思います!

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うっすら虫食いです。
そこまでひどくはないですが、そう思ってそのままにしておくと、数年後、また虫食いになってしまうこともあります。
どこかでクリーニングされて、何年か後にこちらに依頼があってお伺いすると、虫食い再発のピアノを何台もみてきました。
費用の掛かることですが、クリーニングするのであったら、ご事情が許させるならば、できるだけきれいにしておきたいです。
再発によっての負担は、費用もですが、お気持ち的にもかなり大きく、ガックリされているのを何度もみてきて、こちらもほんとに悲しくなってしまって、お客様には、笑顔でいてほしいです。

頑張って剥がしいていきます。

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バランスブッシングクロスも、

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フロントブッシングクロスも、取り除きました。
剥がしておけば、貼るのは並行してやれるので、とにかく剥がしておきたかったので、今日中に終わってよかったです。

だいぶ前にブッシングクロスを剥がしていたのですが、できるときに少しずつ貼ってきていて、昨日、まとめて貼り終えたので、鍵盤を仕上げていきました。

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バランスも、

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フロントも、きれいに貼れました。剥がれてこなそうです!

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汚れが目立つ鍵盤も、

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バフをかけて、汚れを落としました。

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黒鍵も、バフをかけて、黒ラックを塗りなおしました。結構薄くなってくるものですね。

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調整も確認しました!
良い感じで、このままおいておこうと思います。

仕上げ

仕上げに向けて、アクションの組み立てを行います。
アクションを組み立てていくのに、まず、まだやって無かったダンパーの本体あわせを行います。
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一度、ハンマーレールを取り外してから、合わせます。
総上げは、細かくペダル踏んで調整していくのですが、ペダルを踏んでも、全く雑音もなく、窓と一切こすれることなく、スッと、スムーズに動きます。これだけペダルを踏んで、なにも起こらなかったので、胸を張ってお客様に、しっかり治りました!と、伝えられます。

止音も大丈夫で、頑張って合わせたので、レール類を取り付けます。
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積もったホコリを、

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きれいにします。レギュレティングボタンも、一つ一つ、きれいに汚れを落としています♪

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レール類を取り付けて、

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ハンマーを取り付けていきます。本体があると、いろいろ作業しやすいです。

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弦合わせを行いました。
走りや捻じれ、間隔をきっちり合わせないと、ハンマーがきっちり弦をとらえて弦を打つことができず、せっかく修理しても、よい結果に繋がりません。
毎回、時間がかかってしまいますが、合ってないとなにも合わないので、辛抱強く作業しました。

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お引き取りした時は、あんまりにもスティックして、調律できなかったので、早く調律したかったのですが、修理箇所も多く、アクションと鍵盤を入れただけでは、ちゃんとした動きにはならないので、一度粗整調をして、調律を行いました。
修理前、重く、暗く、悲しい感じだったピアノが、今の段階で、リバウンドもなくなり、弾きやすくて張りのある音のピアノになりそうな雰囲気が出てきました。まだ途中ですから、ここから、もっと良くなります。
調律するのが楽しみだったので、調律まで作業出来て、やっぱりよいピアノでした!いろいろもっと楽しみです。

ここからさらに調整を詰めて、仕上ていきます!

再度、鍵盤をあげて掃除をします。
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しっかりきれいにして、ブッシングの硬さも再度見ながら鍵盤を戻します。

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何度も、整調→調律を繰り返していきます。
重ねるうちに、動かなくなってくる?というか、大きく動かなくなるので、何回とかではなく、これなら、というところまでやって、本整調なので、今回は、ちょっとたくさんでした。

最後、もう一度調律して、内装の仕上げは終わりました。

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使用感のあるマフラーも新しくします。

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きれいになりました◎

外装を検品しながら組み立てます。

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人によって、仕上げの手順や、どこまで外すか違うと思いますが、私は、そのピアノを組みつつ検品していってて、長丁番は、大変なので、先に磨いておいて、組み立ての時、もう一度さっと磨いてから天屋根を取り付けています。
なので、どのピアノも、長丁番を取り付けるころ、『もうすぐ仕上がる!』と、感慨深く想ったり、最後の最後まで、気を抜かないよう、気を付けています。

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底板も、再度掃除しました。

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西条市に移動・カワイUS8Xが仕上がりました。
運送がものすごく混んでいて、今、交渉中ですが、納品まで、より安定するよう、調律と整調を重ねていきます。

底板の作成という、なかなかない修理もあり、しかも不透明なことが多く、お客様自身きっと不安だったろうと思います。
こうして完成したものを画像で見ても、お届けするまで、本当に治ってるか、実際見て、ペダルを踏むまで、ピンとこないかもしれませんが、時折ご相談のご連絡させて頂く時、いつも心待ちにしてくださっていることが伺えて、できることを精一杯、作業させて頂きました。
無事にピアノに対面できる日まで、今しばらく、お待ちくださいね。

明日が納品なので、西条市へ移動・カワイUS8Xの最終検品を行いました。

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再度、調律、整調を行って、外装も見直しました。
きちんと俊敏に動くようになって、音もしっかり鳴るようになりました!
もちろんペダルも大丈夫です!

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明日は晴れの予報で、ご家族の皆様、納品を心待ちにされているようです。
お家までの道が難関で、運送会社さんに下見もして頂いているので、きっと大丈夫だと思いますが、無事に納品できますように。

納品されて

西条市へ移動・カワイUS8Xは、午後の最後の便での納品で、運送会社さんがピアノを引き取りにきてくださり、そのまま納品が行われました。

確かにお家までの最後の道が難所で、私の小さな車でも、ちょっとドキドキする道でしたが、運送会社のお方に下見に行っていただいて、大丈夫です!と仰っていらしたままに、難なくお家に到着されました。
うちの敷地に入る入り口も相当狭いのに、庭に二トンのトラックをいれられるお方なので、相当な仕事人で、穏やかで丁寧な方々で、毎回安心してお任せでき、いつもありがとうございます。

トラックが付いてしばらくすると、ご実家のご両親様もいらして、お引き取りの時の丁寧なご対応から、納品ができたらお電話させて頂こうと思っていたので、まさか今治からいらっしゃるとおもってなくて、お会いできてうれしかったです。


下前板を開けて、新しくなった底板を見たおばあ様のホッとされたお顔や、ピアノが設置されると、誰よりも早くピアノの前に行ってピアノを感慨深そうに見ていらしたおじい様のお顔が印象的でした。
このピアノの修理は、娘さんの演奏技術に電子ピアノでは限界がきている感じで、お母様や、ご実家のご両親様が、治して受け継いでほしい、という想いからだったので、娘さんのお家に受け継がれて、ホッとしたり、もう家には戻ってこないので、少し寂しかったりされたのかな、と想いました。

広く素敵なお家で、設置はすんなりで、『ここにピアノを置く予定じゃなかったのに、もともとここにあったみたい♪』『びよーんって感じの音が、きれいに治ってる♪』と、きれいになったピアノが来てほんとにうれしそうでした。

椅子はそのままご実家に置いてあったのですが、持ってきて椅子をピカピカに磨かれたご主人様、そして、最後、かわいらしいお手紙をくださった娘さん、みなさまほんとに温かくて、そのようなお客様と出会い、仕事させて頂いて、喜んで頂けたのが一番うれしいです。

そして、ご自身のピアノを娘さんのために治すため、いろいろ探されて、なかなかしっくりこなくて、しまなみpianoを見つけてピンときてご依頼くださり、相談させて頂きながら、大きな修理なのに、待っていてくださり、ご連絡の度にお気遣いのお言葉をいただいたお母さま。
たくさんのお気遣いを本当にありがとうございました!

今後ともよろしくお願いいたします。

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